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日本計量新報 2008年3月23日 (2716号)

日本人は好奇心とインテリジェンスによって産業を興して生きていく

石油の価格には税が紛れ込んでいて、この紛れ込みが石油価格の高騰で改めて明らかになって、ガソリン税を抜いてしまおう、いや現状のままでよいという議論が国会にまでのぼって騒がしい。
 ガソリン計量器は税を計っていることになっている。ガソリンの税は元売りの段階で計られて計算されているのだということだ。ガソリン計量器はガソリンの値上がりの度合いに応じて税を計る割合が低下する仕組みになっている一方で、計量器の精密さは値上がり分だけ相対的に低下するから、ガソリン価格が2倍になるとガソリン計量器の相対的精度は半分になってしまう。
 地球の石油資源の埋蔵量は以前から30年とも50年ともいわれてきた。その埋蔵量というのは確認されている埋蔵量のことであり、埋蔵量が30年先までしかどのような場合でも発表されないのは産油国の連合した戦略の結果である。石油は現代の社会と産業にとって重要な地位にある。化学製品は石油から変化してできあがり、電気も石油を燃やした熱で水蒸気をつくってタービンを回してつくられる。
 電気をつくる原子力発電は、水蒸気をつくるのに核融合の働きを利用するから、石油をやめてこちらに切り替えるという方法がある。原子力発電は用地選定に偽装があり、電力会社の姿勢にも根本的に疑わしさがあるものの、技術でこれを補うことによって大いなる可能性があることは確かである。原子力発電をエネルギー源として、水から水素をつくってその水素を動力源とする自動車をつくることができれば石油はいらない。
 日本には石油ショックが2度あって、今度は3度目の石油ショックである。これまでの石油ショックに対応して石油の使用量を低減する技術が開発された。3度目の石油ショックでも結局は同じような内容になることであろう。なぜなら埋蔵量30年という産油国の姿勢が変わらず、産油国は手持ちの石油を最大限に高く売る政策をとりつづけるからである。値上がりしているのは石油だけではなくその他の重要資源も同じだとはいっても、物の値段は需要と供給によって決まるから、価格には落ち着きどころがある。
 資源と技術とどちらに価値があるかといえば、革新され発明され便利に利用される技術にこそ価値があるというべきであろう。産油国の利益は一部の人々を裕福にさせるものであり、それによって多くの人々が富むことはできない。アメリカの黒人俳優が主演して売れた映画でも、幸せなのは王子とその王族だけであった。
 電気を通すプラスチックフィルムやガラスの開発はさまざまな分野に応用され一般化している。コンピュータ技術は産業社会への利用のほか石油ストーブにも電話にもさまざまな身の回り品に利用されている。機械仕掛けで不器用だった情報の伝達が、電気とパソコン関連技術によって器用に行われるようになった。アラビアの王様たちは湧き出る石油を高く売って王様の暮らしをする特典を享受すればいいし、日本人は好奇心とインテリジェンスによって産業を興して生きていけばいい。アラビアの王様と日本との関係はいつでもこのような関係であった。


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