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日本計量新報 2008年10月12日 (2744号)

「計量思想」という言葉を別の言葉で説明して普及に努めることだ

計量計測に関する知識や技術の情報が、インターネットの世界に掲載されている。掲載とは、情報発信源にある立場の人々や企業が、自分のホームページに必要と思う事柄を載せることである。インターネットが様々な情報を得るための場となっているのは、インターネットという場、あるいは世界に、多くの人々が情報を掲載するようになったからである。自己のビジネスのすべてをインターネットの世界に情報発信することは、企業の立場からはあたりまえのことになっている。
 個人でも自己の知識や経験をそうした場に情報発信することによって、その知識や経験を世界の人々と共用することができ、そうした知識の総体がインターネットを知識の玉手箱にしている。
 計量計測情報に対するインターネットの世界での需要の多くは、アクセス数から判断すると購買、つまり計量計測機器使用のためのものである。計量計測機器は需要に対応して開発され販売されているのだから、需要家に直接対面していなくてはならないにもかかわらず、見えない需要家を求めて苦労しているという側面がある。その企業、あるいは業種の製品や企業総覧、カタログが需要家の手元に届いているという事例はまれである。
 インターネットの世界は量的にも質的にも大きく広がって、第一次情報の取得という段階から購買手続きにまで達しているから、計量計測企業はインターネット上でのビジネスを積極的に推進しなくてはならない。インターネットを他人事と思ったり、あるいはホームページ運営が煩わしいと考えて手をこまねいている余裕などないにもかかわらず、重い腰が上がらないのはどうしたことだろうか。少し大きな企業でも、ホームページの体裁だけを整え、着飾りすぎていて中身が希薄なものが多いのは、インターネット社会に対する認識不足が原因である。
 企業のホームページは、率先してああしろ、こうしろと指示をするトップと、それを実際に行う人との良い連携によってできあがるものだ。情報関連の世界のトップ企業は、経営責任者が率先してこれを行っている。
 計量計測の世界は、商品アイテムとしては10万を超え50万にもなる計るための機械と、それを製造し販売する人々を中心にして形造られている。計量の制度は、計ることの秩序のためにある。検定や定期検査と呼ばれる、法的規制の対象になっている特定計量器は、機械の確かさや精密さという概念としては中程度のものであり、それは商取引や、商取引などのための証明という需要を満足させることが目標となっている。水分を多く含んだ野菜や脂身が混在する肉を0・1グラムほどの精密さで計量することの意味が薄いからである。
 計量計測の世界の主役はその商品であり、またその商品を造るメーカーであり、流通にかかわる事業者である。計量制度と行政機関は計量が適正に実施されるための助力機関である。その助力機関が主役と考えた主客転倒の時代が長かったために、計量の世界はともすると逆立ちした姿として目に映ってしまうが、歴史の流れはそうした姿が間違いであることを物語っている。
 検定や定期検査が実施される計量器の数は、製造される計量計測機器の1%にも達していない。その1%未満の計量器を見張ることによって計量の安全と適正計量の実現に結びつくのであるから、これ以上に効率的な行政はない。検定は多くの器種で指定製造事業者制度によるメーカー自己検定が実施されているのだから、なおさらである。
 計量思想の普及啓発とは、計量のことを社会によく知らせるということである。計量制度の仕組みの説明や行政の機能などはインターネットの世界ではあまりよく語られていない。地方と中央など、計量行政機関は自らの業務を社会に向かってもっと語らなくれはならない。それにもかかわらずそれをしないのは、語るだけの能力や気概や使命感が不足しているからなのだろうか。
 計量思想の普及を合い言葉にしている計量の世界に一番欠けているのが、真の意味での計量思想の理解であるように思われる。観念的できわめて抽象的な「計量思想」という言葉を具体的な幾つかの言葉で置き換えて、普及に努めることこそが肝要である。
 「確かな基準の策定」「豊かで快適な生活のための計量計測」といった東北北海道計量協会連合会の用語は、そうした事例の一つである。


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