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日本計量新報 2008年10月19日 (2745号)

計測の使命は課題解決であり計測機器は課題解決システムである

数量などを機器をもちいて計ることが計測であるが、それ自体が行為の目的ではなく計測は手段であることが多い。目的が明確でない計測はあり得ない。計っていれば何かが分かるということがあるのも事実だが、これは何かをつかもうとして計っているのであって、そうした計測の成果の一例として、カモメの卵の殻の厚さが、DDT(Dichloro-diphenyl-trichloroethane(ジクロロジフェニルトリクロルエタン)の略で有機塩素系の農薬であり殺虫剤。日本では1971年5月に農薬登録が失効した)による海洋汚染の進行にともなって薄くなっていることをつきとめた事例がある。DDTが殺虫作用の農薬として有効である反面でカモメなどの生存をおびやかし、ひいては人の健康にも被害を及ぼすことが明確に推定されたのである。
 計測とは計ることであるけれども、それはある目的を実現するための行為であり、目的を実現する度合いの優劣が計測の優劣でもある。計測の優劣が測定の精密さで決まることもあれば、測定の結果の応用としての連携作用の優劣に意味があることもある。要点だけを計ってそれを巧みに利用することが優れた計測である場合もあり、こうした方法で従来の計測の費用を10分の1にも100分の1にも低減させている事例もある。
 製品の品質をつくりこむのに滅多矢鱈に測定点を多くして製品をピカピカに光り輝かせているけれども、その製品の命である肝心要の計測誤差が大きすぎて使い物にならないことがある。計測とは、目的に対応してその精密さが決定されるものであり、計らなくても計ったのと同じような結果を得ることが計測の極意である。ここを押さえればすべてが上手くいくという要素を見つけて、その要素を満足させる手段を計測の設計の段階ですませておくことである。
 計量法の目的である『適正な計量の実施の確保』のための一つの方法として、特定計量器の検定にメーカー自己検定制度を取り入れたのは、要素をしっかり押さえれば計量器の性能が確保されるという考えの反映である。メーカー検定された計量器には基準適合証印が付されるが、これは検定基準を満足した構造を保有して製造され、検査もされているという証文になる。役所が検査して付す検定証印とメーカー検定の基準適合証印に何らの優劣はなく、そこにあるのはその計量器の生い立ちである。
 計測は、目的を実現するために手段を講ずることである。目的と課題は同じであるから、計測とは課題を解決することである。
 課題を解決することや、物事を解明することに対応するビジネス用語としてソリューションという言葉がよく使われるようになった。ソリューション(solution)の語源は動詞の solve で、問題を解決する、解答を出すという意味である。名詞形のソリューションは、解決・解明・解答を意味することになる。元々は、ラテン語で「束縛から解放された」を意味する形容詞 solut(us) に名詞化語尾 -ion をつけた名詞にした。
 業務上の問題点の解決や要求の実現を行なうための情報システムに対して使われ始めた言葉がソリューションであり、情報ビジネスの分野で定着している。計測のシステム関連でも、あるいは計測機器そのものにもソリューションの言葉を重ねて商品としての説明をすることが増えている。それは計測の使命が課題解決であり、計測機器は課題解決のためのシステムになっているからである。


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