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日本計量新報 2010年4月18日 (2818号)

マスコミ報道に振り回されず、真実を見定める

フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」の「紀州犬」の項には、ゴールデン・レトリバーの子犬と戯れる紀州犬の写真が掲示してあり、写真説明で「温厚な性質のため、他犬種との多頭飼いでも比較的良好な関係を築くことが可能である」と特性を記している。
 その犬種を長い年月をつうじて何十頭も飼ってきた人は、実際の経験から、そのような犬もいるけれども、ウィキペディアの説明のように規定することは間違いであると言い切る。10人以上の飼い主に上記の表現を示すと、やはり間違いであると口をそろえる。
 その「ウィキペディア」は、(社)日本計量振興協会を「経済産業省所管の計量士で構成された社団法人」と説明しているが、同協会定款には、以下のように定められている。
 (1)第1種正会員は、全国及び都道府県(市町村の地域を含む。)並びに複数の都道府県をその区域とする計量に関する団体とする。(2)第2種正会員は、計量機器、測定機器、分析機器等を製造し又は使用する法人並びに計量法に基づく認定事業者又は適正計量管理事業所とする。(3)賛助会員は、前項に該当しないもので、本会の目的に賛同し、その事業に協力しようとするものとする。
 「ウィキペディア」の説明が何を根拠にしたものか疑問である。
 (社)品質工学会が中心になって推進する「品質工学」を「ウィキペディア」は、「品質工学(ひんしつこうがく、Quality Engineering)とは、技術開発・新製品開発を効率的に行う開発技法。考案者の田口玄一の名を冠してタグチメソッドとも呼ばれる(TMと略される)。特に海外ではこちらの呼び方が一般的である」と定義し、その概要を「主に3つの分野で構成される。(1)開発設計段階、つまり生産に入る前のオフラインでの品質工学(パラメータ設計→損失関数)、(2)生産段階、つまり生産のオンラインでの品質工学(損失関数)、(3)MT法(マハラノビス・タグチ法)」と説明する。

当の(社)品質工学会は、自身のウェブサイトにおける「品質工学の薦め」で、以下のように定義している。
 高品質と高生産性を同時に実現するための具体的な技術的方法論として,田口玄一博士によって創始されたのが品質工学です。その中心的な方法は機能性の評価とその改善方法です。
 機能性の評価とは,多くの品質特性を一つ一つ評価するのでなく,製品やシステムの本来のはたらき(機能)を評価しようというものです。顧客の使用条件や環境条件の違いによって,そのはたらきがどれだけ影響されにくいか,あるいはばらつきにくいかの程度(機能性)を,SN比という一つの測度で表現します。

次に、機能性の改善に使用する道具が直交表です。(中略)要因を一つ一つ調べるのでなく,一遍に調べてしまう方法が直交表を使った実験なのです。(後略)

また「汎用技術としての品質工学」として以下のように定義している。

品質工学は技術そのものを取り扱うのではなく,技術的な最適条件を能率良く求める方法です。計測技術と同じように汎用技術であるので,いろいろな固有技術の分野でその技術課題解決に適用できます。
 一つの物事を説明したり定義するのにも、上記のように複数の内容が存在する。そのどれを見るかによって人の考えは分かれてしまう。情報が溢れる社会にあって、人は象の鼻をなでて象の全体像を捉えようとしがちである。

現代の社会と経済をみる指標の一つに鉱工業生産の動きがあるが、日本経済においてサービスに関連する産業の割合が増えている状況下では、鉱工業生産は、これまでほどの意味をなさなくなっている。
 デパートの売り上げ額で消費動向を判断することができないのは、デパートの売り上げ額は消費動向を表現する指標にならなくなったからである。
 世論調査というのは、マスコミが仕掛けた情報操作が、国民にいかに浸透しているかを確認する場であるように思える。マスコミは、国民にとって必要なことを報道するのではなく、官公庁から出てきた経済指標やその解説ほか、苦労せずに手に入れた事実をも思慮なく流していることが多い。
 朝から晩までお笑いタレントを登場させて分別なくただ人の関心を引き、目をつなぎ止めているだけのテレビ放送は、その存在価値を大幅に落としている。
 こうしたマスコミの報道や状況に振り回されることなく、人それぞれに流儀を決めて真実を見定めていかなければならない。

 私たち日本計量新報の最大の使命は、人々に計量機器の情報を直接送り届けて、適正な計量を実施する下地をつくることである。紙媒体とインターネットを併用して、これを実現している。
 もう一つの大事な役割としては、計量行政や校正などのサービス業務に従事する計量技術者、計量士などが、計量技術や計量法の知識を習得できるように、必要な情報を提供することである。新聞社の力不足で、必ずしも新聞の購読者を満足させることができないが、常に強い気持ちを維持して期待に応えようと考えている。

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