朝起きてから就寝するまで、人の行動は家事や職場での就労など、多くの場合同じことの繰り返しである。昨日のつづきが今日であり、今日のつづきが明日である。 人は、ほぼ同じことを繰り返しながら生きていると、思考方法も同じようになる。自分の行動を常識としてしまって、それを強固に繰り返す。強く意識していない限り、過去の常識や固定観念にとらわれてしまうのである。もし、全く変わらない世の中があるならば、過去の常識を厳格に再現する行動は最大の美徳になりうるかもしれない。 しかし、時代は刻々と移り変わっていく。昨日是としたことが、今日もそのまま通用するとは限らない。常に新しい目で物事を見ていくように心がけなければならない。とらわれない心で次々と新しい発想をしていくことが、進歩と発展につながる。 ◇ 世の中は諸行無常と釈迦が説き、ギリシャの哲学者ヘラクレイトスは、万物は流転し続けると考えた。 今の時代は、技術や社会状況が千変万化である。情報化が進み、地球の片隅でおきた技術の革新や出来事が瞬く間に世界に広がる。 アメリカで発生した保険会社リーマン・ブラザーズの経営破綻は、間をおかず金融恐慌となって世界同時不況を引きおこした。 どの自動車会社の自動車にも発生しうるトラブルが巨大なトラブルであるように伝達されることによって、やり玉にあがった自動車会社はその対応に塗炭の苦しみを強いられている。今日無事でも明日無事であるとはいえない時代である。 ◇ このような時代にあっては、自分の視野に入っていない世界や状況を、意識してみるように努めることが大事である。 旧来の仕入れ方式で旧来と同じように商品を売っている間に、競争相手がそれよりも安い値段で商品を売る方法を編み出して商売に成功しているという事例は多い。モノの値段には背景があり、仕入れが安ければ安い値段を実現できる。 購買者は、あれが欲しい、これが欲しいという巨大な物欲によって最安値の商品を探し出す。調べればさまざまなことがわかる。 インターネットはそうした調べごとに大いに役立つ。少し努力すれば、安価で良い品物を買うことができる。難点は、画像の解像度に限界があるため品質感が十分に表現できないことである。中古品の場合など、品質の善し悪しが判別しがたいために比較が難しい。 ◇ 自分がしている仕事の分野で過去の常識、固定観念を覆す行動をして新しいことを成していくのは難しい。人は自らの心を縛ったり狭めているからである。 今まで表から見ていたものを裏から見、裏から見ていたものを表から見るといった訓練をすることは、発想の転換のための一つの方法である。 身近な事例を通じて、過去の考え方、これまでのやり方にとらわれることなく、日に日に新たな観点に立ってものを考え、ことを成していく意義を強調する。旧態依然たることでは駄目である。何事にもとらわれることなく、常に新しい目で物事を見ていくように心がけることだ。
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