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日本計量新報 2010年6月6日 (2824号)
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計量協会職員は一隅を照らす、これすなわち国の宝である
世の中に不変のものはなく、計量の世界でも変化したことが幾つもある。
残念ながら、後退という意味で変わってきていることの一つに、計量協会の事務を運営する中に、知識や能力が不足している者が増えていることがある。計量協会に集結する人に「計量思想の普及」に情熱を持った人が少なくなった。
大きな一因として、知識と情熱を持ち計量界に大きく貢献した貴重な人材が、年齢のため職務を離れていくことが挙げられる。
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最近では、東北地方の計量行政で大活躍した小笠原良爾氏が、2010年3月末日をもって退任した。
同氏は、青森県計量検定所の所長を勤め、退任後は青森県計量協会事務の運営に尽力した。西秀記会長を補佐して、同協会が県から指定定期検査機関の指定を受けるため大きな役割を果たした。
同氏の計量の安全の確保と地域計量の振興、そして計量思想の普及にかける情熱は想像を絶するものがあり、その活動ぶりは周囲の人々のみならず東北地方では有名で、尊敬もされていた。この度、50年以上におよぶ地域計量と計量観念の発達のための活動に、とりあえずの終止符を打つことになったが、この機会に、小笠原良爾氏の活動を賞賛したい。
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計量協会など地域の計量関係団体の活動は、先に紹介した小笠原良爾氏のような人々の献身的な活動によって支えられている。
少し前まで、全国各地では計量検定所や計量検査所を定年退職した計量公務員が計量協会の事務局で仕事をして地域の計量行政をさまざまなかたちで補い、これをよく運営するために大きく貢献してきた。
計量行政を通じて培った計量法・計量技術の知識と、計量教習所の教習や先輩から叩きこまれた計量思想普及への思いを兼ね備える人は、人格と相和して、地域の計量の安全を守るためになくてはならない人として、周囲からも推される存在になる。「計量の神さま」「計量行政の神さま」のような存在である。
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計量協会を運営する事務責任者は、計量法と計量行政に関する豊富な知識と見識を持っていることが望ましい。
知識に欠ける人は、謙虚でなければならない。知識のない人が、これまでに別の職場で得た経験への妙な「誇り」から傲慢に振る舞ったり、事業や組織の不必要な改編などをして計量協会の運営を困難にしてしまう事例がいくつかある。
そうしたことと対比すると、小笠原良爾氏や、ほかの都道府県で同じように自己の利益を超越した献身的な働きをしている人々の価値が、より際だつ。
伝教大師最澄の言葉を借りれば、まさに「一隅を照らす、これすなわち国の宝」である。
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