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日本計量新報 2010年6月13日 (2825号)

地場のハカリ製造・販売企業がハカリ産業を支える

コンビニエンスストアが街角に新規開店する一方で、そっと店をたたむ食品小売店や雑貨販売の店がある。都市部でも地方でも、開店休業の状態にある店が少なくない。コンビニエンスストアで多くの生活関連品を便利に入手できるようになったことが、大きく影響している。
 洋服も同じである。衣料品チェーンストアが郊外を中心に店舗を拡張し、全国各地に勢いを広げている。地域に旧来からあった衣料品店は、多くの場合、商戦に負けていて巻き返す気配がない。仕立て洋服店はほとんど消えてしまった。
 その他、ホームセンターは多くの金物店などを経営難に追い込んでいるし、個人経営の商店は全国的に厳しい状況にある。
 大手企業が全国展開するコンビニエンスストア、衣料品全国チェーン販売、洋服販売チェーン、ホームセンターやレストランチェーンが、日本の旧来の生活産業ならびに地域産業を大きく変えた。
 自動車産業では、トヨタをはじめとした国内外の主要メーカーにとって、中国での販売が今後の業績拡大を決定する重要な要素となっている。
 オートバイは、途上国などで需要を伸ばし、今後も生産増加が予測されるが、国産メーカーの日本における生産は、全世界における需要の2割程度に低下した。技術移転により、海外での製造・販売へと移行した結果である。一方、アメリカのオートバイ製造会社である、ハーレーダビッドソンの部品の8割は、日本製である。
 技術が一般化し確立した分野の産業は、低コストや販路拡大といった必要に応じて、技術移転と工場移転がなされる。自動車産業もオートバイ産業と同じような経路をたどることになろう。

 このように、多くの産業が地場から日本全国へ、日本から世界へと製造・販売形態を変化させているなか、計量器産業は、その歴史も関係して、独特の発展を遂げてきた。
 江戸時代には、藩ごとに秤座などが設けられていて、ハカリなどの度量衡の事業が独立して存立していた。<RUBY CHAR="枡","ます">などは、同じ山梨県内でも甲府地域と都留地域でその容量が違っていた。江戸時代は、国といえば藩のことであり、日本国という意識は希薄であった。度量衡も藩ごとに微妙な違いがあったので、全国一律の産業にはなりにくかった。
 いくつかのはかりメーカーが全国展開で規模を拡大している現在も、それと比べものにならないほど多くのはかりメーカーが、地域に根付いた独自の販売関係のビジネスモデルを築き、健闘している。

各企業における事業展開も様々だ。
 販売と修理・メンテナンスを同じ割合で請け負う企業、修理・メンテナンスを主体にしている企業、地域の企業のハカリ需要を満たす新しい製品を製造して規模を拡大している企業、工場の生産設備や農業分野の計量の合理化ほかに深くかかわった特別のハカリをつくって全国展開している企業などが存立している。
 計量器産業のうち、はかり産業の総需要は1000億円の規模にある。内訳は、はかりメーカーの製造金額の総額が600億円から800億円の規模、これに販売関係の企業、メンテナンスをする企業の売り上げが加わる。
 計量器産業では数多くの企業が地域を基盤にして存立し、この総需要を支えている。多岐にわたるユーザーの要望に応え、計量計測の土壌を維持・発展するためにも、そうした地場企業の健闘を引き続き期待する。

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