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日本計量新報 2010年6月20日 (2826号)

「スマートメーター」の現在と、カタカナ語氾濫に関する一考察

積算電力量計に通信機能を付加することによって、電力会社が計測データを遠隔検針し、口座振替などによって料金を徴収するシステムが、完成している。
 まだ全国的には、一般家庭に普及しておらず、現在、幾つかの電力会社において社会全体での実用化に向けた実証実験が行われている段階である。

電気・ガス・水道の料金支払いを含めて、社会の仕組みは自動検査、自動課金、自動徴収の方向に動いている。計量法でも、JISを引用して、通信機能の部分も含めた検定が始まっている。技術の進歩に対応するために準備をすることは当然であり、安全かつ確実な検針と料金計算・課金と料金徴収方法を検討する時期にきている。
 経済産業省の指導の下で「スマートメーター制度検討会」が設置され、2010年5月26日に第一回会議が開催された。今後、毎月会議が開催され2011年2月に検討会としての答申をまとめる。
「スマートメーター検討会」と銘打ったこの会議では、スマートメーターの概念を、狭義と広義に分けて定義している。狭義では、「電力会社等の計量関係業務に必要な双方向通信機能や遠隔開閉機能などを有したメーター」、広義では「狭義の概念に加えて、エネルギー消費量などの『見える化』やホームエネルギーマネジメント機能等も有したもの」としている。冒頭で紹介したシステムは、狭義での「スマートメーター」システムということになる。
 ガスメーターと水道メーターは同じメーカーで製造していることが多いので、同一の通信システムを用いることも考えられるし、これに積算電力量計を加えた方式で検針とデータの送信をすることも想定される。
 積極的にこのシステムを追求し改良が進めば、10年あるいは20年以内に、ほぼ間違いなく本格運用されるだろう。

計量法の検定対象計量器は、取引と証明にかかる計量器が対象であり、このうち社会的な意味や旧来の商慣習などを考慮して「特定計量器」を指定。この特定計量器のなかからさらに具体的な内容を規定して、検定を実施している。
 電気料金を計る家庭用積算電力量計、ガスメーター(都市ガスメーターおよびLPGガスメーターなど)、水道メーターなど公共料金としての性格をもつ料金計算のための基礎になる計量器は計量法の検定の対象になっている。計量法の指定製造事業者制度によってメーカーが製品を計量法の規定に従って自主検査していれば、検定に合格したものと同等と見なされる。電力量計やガスメーター、水道メーターなどの計量器は、ほとんどがこの方式で検定の要件を満たして出荷されている。
 これら積算電力量計、ガスメーター、水道メーターは検定に有効期限が設けられていて、有効期限を満了した場合には、修理後に再検定を受検したあとで使用される。メーカー出荷時における指定製造事業者制度に対応する「指定修理事業者制度」は計量法の規定にないために、修理後の再検定は積算電力計は日本電気計器検定所が実施しており、ガスメーターと水道メーターは計量行政機関が実施している。

 話は「スマートメーター」に戻る。経産省をはじめとして、様々な場所で「スマートメーター」という単語が使われ始め、訳語がないままに流布している。しかし、その単語の意味を正確に知っている人はどれほどいるだろうか。
 外国語の単語を取り入れるには、二つの方法がある。一つは、外国語の音をそのまま取り入れたもので、カタカナで表記する場合が多い。もう一つは、外国語の意味を日本語に訳すもので、訳語とよばれる。
 福沢諭吉は外国語を巧みに日本語に訳して使用したことで有名であり、これによって文明開化も国民に容易に受け入れられることになった。
 現在の日本社会には、「スマートメーター」のように重要な社会用語でありながら意味がはっきりと一般認識されていないカタカナ表記の外来語が氾濫している。これらを日本語に直すか、対訳を付記するかして表記する必要性を指摘したい。カタカナ語のままだと認識が人によって異なるなど、混乱をきたすからである。

かくいう日本計量新報も、2824号1面掲載のスマートメーター検討会開催の記事には、「スマートメーター」という外来語の説明がなかった。反省したい。
 新しい物や考え方を外国から取り入れて紹介する側には、その意味を明確に示すことが常に求められる。

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