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日本計量新報 2010年7月4日 (2828号)

自分は無知であると思うと新境地に立つことができる

計量法と計量関係事業者という関係のなかで、ある人々は計量法の効果の及ぶ範囲やその限界をよく知っていて、上手につきあって事業を成功に導いている。
 計量事業者の事業が、すべて計量法に絡むことは少なく、規模を拡大している企業ほど製品や事業は計量法との関わりは薄くなっている。
 計量法と計量行政に強く縛られて生きてきた小規模企業のなかには、計量法への依拠心が抜けきらないために、計量法除外の粗悪な計量器が市場に出回るのを役所の責任だと考える者もいる。
 また、計量法の型式承認制度は、十分な知識と対応能力を持たない企業に、事業を阻害する制度としてとらえられてしまう場合がある。
 前者は、計量行政機関は粗悪品に対して手を打たないという不満をもち、後者は、検定制度は計量公務員を食わせるための制度であるという不満をもつ。間違った認識でも、偏ったものの見方や考え方でも、当人にとっては、それが真実だと映ってしまう。このような人々からは、計量法と計量行政への恨み節が絶えず聞こえてくる。

 検定や検査を強制されてきた者にとって、計量法の内容と構造への理解は、昔のままである。考えが偏ると、一方は計量行政に依存し、一方は計量行政を踏み倒そうとするなど極端な態度となって表出する。
 人は過去に強く囚われがちであるので、自らが過去に形づくった常識を変えることが難しい。人は自身の心を縛ったり狭めてしまうものであるということの証左をこの二つの事例にみることができる。

 今まで表から見ていたものを裏から見、裏から見ていたものを表からみるといった訓練をすることを通じて、発想の転換を心がけるべきである。自由な発想ができる頭脳をつくるべく意識して心を解き放ち、視野を広げることである。

 信長は、鉄砲の時代がくることを見通して、武田を相手にした長篠の戦いで、いち早く鉄砲による戦術を用いた。結果、無敵といわれた武田騎馬隊は壊滅し、信長は勝利をおさめた。
 また、大砲を撃ち込まれた豊臣の淀君は、これに度肝を抜かれて戦いを放棄した。
 騎馬戦術は鉄砲のまえに駆逐され、城と掘り割りとでできた館は戦術上の意味をなさなくなった。
 信長には先見性があった。先見性は次代を生き抜く条件であり、指導者の資格である。世の中は変わる。千変万化する世の中にあって、人は先見性を養わなくてはならない。時代の移り変わり行く方向を見極め、予測しつつそれに対応する手を打っていくことによって、次代の繁栄がもたらされる。
 今までの経験や知識に囚われない心で、次々と新しい発想をしていくことが進歩と発展につながる。
 自分は無知であると自覚することは、知らない世界に自分を案内する方法でもある。

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