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日本計量新報 2010年10月10日 (2841号)

計量計測器産業は新しい土俵を開拓し未来を切り開く必要がある

各種工業会統計によると、計量計測器産業の生産水準は、2008年9月のリーマンショックを起因とする世界同時不況に連動して、2008年以前に比べ、平均して3割ほど下がっている。
 日本のほとんど全ての産業が、同様に打撃を受けている。経済産業省発表の全産業活動指数によると、2006(平成18)年、2007(平成19)年、2008(平成20)年7月まで好調が続いていたのが、一転して大下落し、2009(平成21)年3月に底を記録している。その後、回復に向かっているものの、2005(平成17)年8月を指数100とすると、2010(平成22)年7月現在は98であり、今なおマイナスである。
 最近の計量計測器産業の動向を示す指標として、今年9月30日に経済産業省が発表した2010年(平成22)年8月分機械統計(速報)から、計量器を抜き出してその動きを追う。
 工業用計重機は生産台数が前年同月比22.4%増加、出荷台数が25.9%増加している。好不況による変動幅が激しい精密測定機(光学測定器を含む)は、生産台数が前年同月比247.6%増加、出荷台数が172.6%増加。工業用長さ計は生産個数が前年同月比75.5%増加、出荷個数が78.0%増加。試験機は生産台数が前年同月比68.5%増加、出荷台数が19.4%増加。分析機器は生産金額が前年同月比29.7%増加、出荷金額が16.8%増加。電気測定器(半導体・IC測定器を除く)は生産金額が前年同月比32.6%増加、出荷金額の数値発表はなし。半導体・IC測定器は生産金額が前年同月比122.7%増加、出荷金額の数値発表はなし。工業用計測制御機器は生産金額が前年同月比1.8%増加、出荷金額の数値発表はなし。医用測定器は生産金額が前年同月比6・8%増加、出荷金額の数値発表はなし。ガスメーターは生産個数が前年同月比26.0%減少、出荷個数が25.4%減少。計量計測機器のうちではガスメーターだけが生産と出荷の双方を減少させている。ガスメーターは自治体などが需要家であるために、ほかの計測機器と同じ動きをしない。
 ほとんどの計量計測器産業が、生産と出荷の水準を前年同月比から増加しているが、リーマンショックによって30%ほど落ち込んだ数値からの回復過程といえる。今後の展望として、最盛期の頃の市場を、そっくりそのまま回復するのは難しいと見るべきであろう。はかり産業を例にとると、1000億円まで生産を伸ばしたことがあったが、その後は、この7割ほどの水準を平均として動いており、リーマンショック後はさらに3割ほど下げている。

 今後、計量計測器産業や関連企業が業績を伸ばすには、市場が拡張している中国やインドなどアジア経済圏での販路拡大が成長の鍵になる。また、日本市場や海外市場に新たな需要を喚起する新概念の計量計測機器や、計量ソリューションシステム(企業がビジネスやサービスについて抱えている問題や不便を解消するための情報システム)を開発することが、企業発展の本筋である。

 NHKのテレビ番組で放送された「計るだけダイエット」は、体重をはかる事が健康につながるという、新しい考え方を世の中に普及させた。結果として、体重計は新しい市場を開拓できた。
 計測器メーカーのタニタは、自社の社員食堂で提供した低カロリーのメニューを、どんな食材をどのように調理するかなどのノウハウとともに『体脂肪計タニタの社員食堂−−500kcalのまんぷく定食』として発売した。体重計販売のイメージも追い風となってか、同書は多くの反響を呼び、人々の役に立っている。参考とすべき、素晴らしい事例である。
 これからの計量計測器産業には、今までの考えや技術、計測文化に風穴を開けて、大きな未来を切り開く躍動が求められる。

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