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日本計量新報 2010年10月17日 (2842号)

計量行政事務の実施計画を自治体住民に明示すべきである

日本のテレビ放送におけるニュース放送時間は、ニュースに特化した番組はもちろん、ワイドショーでの放送枠を全て合わせても少ない。さらに、制作者側は限られた情報しか流さない。NHKで一定時間おきに放送されるニュースは一日を通じて同じ内容を繰り返している。民報にしても同様である。
 世の中では多くの事柄が絶え間なく起きているのに、テレビを通じて視聴者に伝えられるのは、その中のごく一部である。これでは、人々は、ニュースになるような事柄がわずかしか起きていないような錯覚をおこす。見えていることだけが事実であるように捉えてしまいがちである。

 人は、見えないものについては考えないのが普通である。アインシュタインの相対性理論などは、見えていることと逆のことを説明しているので、一般の人は度肝を抜かれる。結果としてアインシュタインはとんでもない天才として畏敬される。

たんすの奥にしまい込んだ高額の貯金通帳や、封筒に入れた現金の所在も、目にしないでいるうちに存在を忘れることが少なからず起こる。蔵の奥からでてくる先祖が収集した貴重な美術品なども同じことで、偶然それを発見した子孫がテレビ番組「開運!なんでも鑑定団」のような鑑定の場に持ち出し、価値を再認識することがある。先祖自身が、大金を投じて収集した骨董品や美術品の存在を、蔵の奥深くにしまいこんだために、忘れてしまうのである。
 見えない物事について意識しない、あるいは忘れてしまうということが、法則であるかのごとく頻繁に起きる。

 地方公共団体が行う、計量事務として計量法が規定している幾つかの事柄にも、この法則が当てはまるようだ。
 計量法の計量事務の内容を知っている職員がいなくなると、たとえばハカリの定期検査の実施率は極度に低下する。専任の計量職員がいなくなった地方公共団体では、この業務が実質的に放棄された状態になっていることがある。本来行うべき計量事務も、その内容を知っている人がいなければ、その地方公共団体全体からはかりの定期検査ほかを実施する意識は消えてなくなるからである。知らないことは見えていないことと同じであるから、そのようになってしまう。

現在、元気に充実した計量行政を実施している地方公共団体でも、専任の職員を減らすように「厳命」されて、職員削減が実施されているところが少なくない。
 この傾向が進行するにつれて、地方公共団体の計量行政の実施は計量法の規定に照らすとサボタージュになるという状況が、今以上にでてくる。計量法が指定製造事業者制度や指定定期検査機関制度を推進しているのは良いとしても、こうした制度を隠れ蓑にして、地方公共団体がなすべき計量事務を放棄している現状は憂うべきことである。地方公共団体の計量行政職員の減少率は極端であり、異常な状態である。
◇ 
 「必要なことは見えるようにする」ことが、必要なことを実施する有効な手立てになる。
 地方公共団体が行うはかりの定期検査業務や、立ち入り検査などの各種指導業務の実施計画を所内に掲出し、広報誌ほかでアナウンスすることを積極的に実行してはどうであろうか。
 自己の専属的な責任事項であっても、目に入ら(知ら)なければ実行しなくても平気でいられる。そのようなことにならないためにも、地方公共団体の計量行政にかかわる計量事務の実施計画を、自治体の住民に明瞭に示すことが大事であるように思う。

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