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日本計量新報 2011年3月6日 (2860号)

閉ざされた論理回路にとらわれず、もう一踏ん張りしてみる

総務省を始めNHKや民報各局は、TVや各種パンフレットで「2011年7月24日に今までのテレビ放送(地上アナログ放送)は終了するため、それまでにテレビを『地上波デジタル放送』(地デジ)対応にかえる必要がある」と周知をはかっている。
 繰り返し述べられていると、視聴者はそれが当然であると決め込んでしまいがちだが、地デジ対応に関して視聴者が全て経費負担する構造には疑問が残る。複数のアナログ式テレビがある家で全てを地デジ対応にするとなると、出費がかさむことになる。視聴者の対応状況をみると、出費が負担にならない人の多くは既に切り換えを完了している。費用を工面できない人は、映像が映らなくなる時がきてテレビがガーと鳴って白い雪模様になり映像が映らなくなることを想像しながら、そうなったらそれでいいと居直っている。
 視聴者が負担を背負う一方で、恩恵を受ける者もいる。家電量販店では、アナログ放送終了が間近に迫り、地デジ対応テレビの販売と地デジ対応のアンテナやチューナーの販売設置などによって特需が発生している。ある店では地デジ対応関連商品の緊急売上げ増によって、サービス車を新車に換えたという。
 NHKなどはBS放送画面の5分の1ほどに字幕を入れて、料金の支払いをすればこれが消えると受信料徴収にデジタル放送を活用している。
 地デジ対応に関して、視聴者の負担が当たり前のようになっている構造も問題だが、視聴者が賢い対応策を選べているかも疑問である。
 主な対応策として、専用のアンテナを設置した上でデジタルテレビに買い換える方法や、今使用中のテレビにデジタルチューナーを買い足す方法が紹介されることが多いため、他に方法はないと思う人が多いようだ。実際は、有線放送を利用することで、地デジ用のアンテナを設置することなく今までのアナログ対応テレビを使えるという「意外」な方法もある。
 ケーブルテレビ会社は自社の設備で地上デジタル放送を受信し、その信号を加入者に有線で届けている。多くのケーブルテレビ会社は従来のアナログ対応テレビでデジタル放送を受信できるよう、信号をアナログ方式に変換して届けるサービスを提供している(2015年3月までの予定)。そのためアンテナを設置する必要がない上、地上デジタル放送の受信機能を搭載していないテレビでも視聴でき、デジタルテレビなどの購入費を先送りできる。有線放送は山間僻地までに行き渡っているという訳ではないが、相当の勢いで放送網を広げている。
  東京近郷のある家では、訪問販売を受けて有線放送に切り換えたために、旧来の電話料その他の関連費用と変わらない出費で地デジ対応をしている。全面切り替えの8カ月ほど前に、大した出費なしで地デジ対応ができた上に視聴できる放送番組数が10倍になり望外の満足である。


 同じようなことが、世の中にはたくさんある。物事を自分が知っていることや身近な人が言うことだけで決めてしまわないで、他にも方法があるかもしれない、と想像してみることが大事である。高学歴者や論理派の人は、外に向かって解放されない自分だけの閉ざされたぐるぐる周りの論理をつくって、勝手に世界を見ていることが多い。蓄えた知識は貴重であり、そうした知識を保有するために努力してきた自分を否定することはないが、自分の知識は十分ではないと思って、もう一踏ん張りすることを真の努力といっていいのではないか。
 自分は知識習得そして情報習得に頑張っているけれども、まだまだ知らないことがあると思うことによって、自分の常識の壁を乗り越えることができる。

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