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日本計量新報 2011年3月27日 (2863号)

未来の事故を防ぐため真の問題追及が求められる

原子力発電は、国をあげて推進しているエネルギーである。電気事業連合会公表の資料によると年間の発電電力量に占める原子力量は、1980年には17%であったものが2009年度では29%と割合を伸ばし、2019年度には41%になることを予測している。
 原子力発電の利点としては、核分裂のエネルギーを利用するため発電の過程でCO2を排出せず、温暖化防止対策に有効であること、燃料となるウランが石油に比べて政情の安定した国々に埋蔵しているため資源の安定確保が可能であること、使い終わった燃料を再処理して再び燃料として使用でき燃料の安定供給につながること、石油や石炭に比べて少ない燃料で発電できるため低コストであること、などがあげられる。

 一般の人々の知識と外部からの推察だけでは、日本の原子力発電の安全性がどの程度であるかは判明しない。しかしながら、新潟県中越沖地震に起因する東京電力の柏崎刈羽原子力発電所3号機変圧器火災と放射能漏れや、今回の東北地方太平洋沖地震による福島第一原子力発電所の原子炉事故の事例から、原子力発電施設が強い地震と津波によって損傷を受けることは、明らかである。
 今後の原子力発電所建設は、津波の被害を回避する方法を講ずることが前提になる。
 地震への対策はどうすればよいか。日本の場合は現実的には地震の影響を回避できる立地はない。立地が駄目であれば、他の方法で地震対策をしなければならない。少なくとも今までの構造では、不十分であることは確かである。

 ある電力会社の代表は「コストカッター」と社内で呼ばれるほど経費削減を追求した結果、代表の地位を手に入れたのだという。熱中症が心配される時期でも、電力料金の滞納者には電気の供給を止める。電力を低コストでつくって高く売る仕組みを作ってきた。しかし、今後は、電力会社の原発施設への設備投資が十分であったかも検証されることになるであろう。
◇ 
 原子力発電所ができてから現在に至るまで、様々な原因による複数の事故がおきている。
 その中には、原因が計測器であると報道された事故もある。1995年12月に福井県敦賀市にある高速増殖原型炉「もんじゅ」において、2次主冷却系配管からナトリウムが漏えいする事故が起きた時のことである。温度計部分に問題があったと報道され、設備更新のために計測機器を含めた部品を総入れ替えすることとなった。
 最終的には、温度計さや管の設計が不適切であったため、ナトリウムの流れによって振動し、破損したものと判断された。取り付けられた温度計に本質的な原因があるのではなく、取り付ける設計自体に問題があったのである。それにもかかわらず、当時は温度計に問題があるかのように報道された。
 事故が起きたとき、設計上の根本的な問題から目を逸らして、何の罪もない適正な計測機器が原因として疑われスケープゴートにされるのは、残念なことである。
 未来の事故を防ぐためにも、本当の意味での問題究明と対策が求められる。

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