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日本計量新報 2011年3月13日 (2861号)

計量団体の役員は誇りをもって重責を担うべきである

ある地方計量協会の役員人事で、現在の会長が老齢を理由に職を辞すると述べた。周囲の再選の希望を押しのけるものであったため、予想外に揉めることになった。辞意を表明した会長は「現在の役員は事情に詳しく能力がある人ばかりだから、自分が退くことによって生じる会への損害はない」とかたくなである。新会長と新役員の選出のため2度も理事会を開いて議論をした。そうした中、会長の留任と再選を望む声が出される一方で現在の副会長を推す声もでた。会長候補推薦委員会もつくられて4人の名があがり、その4名で議論して結論をだした結果をそのまま受け入れることになった。最終的には、その候補者のうちの1人が推されて会長に就任することになった。
 新会長に選ばれた人は「計量協会の会長になることは名誉なことです」と挨拶した後に「ただし1期だけにして良い人に引き渡したい」と付け加えた。会長を決めるのは理事会であるから、後の言葉は僭越なことである。が、周囲は新会長の気持ちを察した。

 別のある団体の会長は「会長をやらされている」という表現を用いた。それに対して「名誉なことに会長の職を仰せつかっている」と述べるのが筋なのではないのかと、ある人が苦言を呈した。もちろん、会長の発言が謙遜からでたものであることを知った上での苦言である。またある団体では、会長が就任挨拶で、「前会長の強い指名に従ってやむなく会長職を引き受けることになった」と述べた。これを聞いた会場の幾人かは、「会長は自分たちが由として決めるものなのに、何たる言いぐさか」と強い不満を口にした。不満はもっともである。新旧の会長たちの態度は思い上がったものであるし、理事会が存在し代表は皆で選ぶという、民主主義を貫く本来の取り決めにかなっていない。冒頭に述べた計量協会の会長人事では、「会長は皆で選ぶもの」という認識が前会長に認識があったため、新会長をあえて指名しなかった訳であり、この点は評価できる。
 通常は、会長を補佐する立場にある理事のなかで推薦された候補者のなかから、次の会長が選ばれることに何の不思議さもない。余程のことがなければ会長が退いた後には副会長が昇格するのが通例である。とはいっても多くの場合、役員を選任するのは理事会もしくは総会であり、会運営の民主主義を貫くことが大事である。ただし、人事権を実質上、許認可権益がある役所がもっている場合には、こうした人事が無視されることが少なくない。都合が色々とあるにせよ正しいことではないから、役員などの人事を行うためには十分な配慮が必要である。
 世の中の平和と安全の礎になる重要な事業を推進している計量計測関連団体にあっては、役員や役付き理事、会長の職務は重責である。「やらされている」などという表現ではなく「名誉なことに計量協会の役員をしております」と述べるべきで、実際にそのように思って職務を全うすることが望まれる。
その一方で、名誉や名刺の肩書き、自分の仕事にとって都合が良いといったことだけが目的で、会の仕事をしないで重要な役職に平気で就いている人もいる。そのような人は職を解かれて当然である。

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