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日本計量新報 2011年8月28日 (2883号)

計量制度と正しく計る心とが世の中を支える

 世の中が上手くいくための仕組みの一つに度量衡制度がある。日本の度量衡制度(計量制度)は計量法によって形つくられており、その内容は大きく二つに分けることができる。一つは計量単位を定めて単位ごとの計量標準を世の中に供給すること。もう一つは、取引と証明を含めて計量が適正に実施されるために、特定種類の計量器に検定や定期検査の義務を課し、その計量器を使って行う計量行為の正しさを求めるというものである。

 中でも計量が適正に実施されるための制度は、特に国民生活と関係の深い制度であるといえる。とあるお茶の販売店で実際に見たハカリを例に挙げる。

 取引に使用されるハカリは計量法で特定計量器と定められ、検定証印と共に「最小測定量」が表記されている。旧計量法における「使用範囲」が改められたのが「最小測定量」で、「そのはかりで正確に計量することができる最小の質量」のことである。特定計量器に表記する義務が、特定計量器検定検査規則において記されている。

 この店のバネ式の指示ハカリは、秤量(ひょうりょう)が30kg、最小単位一目盛は100g、最小測定量が1kgから30kgと記載されていた。つまり、大きな誤差があるので1kg以下の取引や証明のための計量をしてはならないことを意味している。100gの目盛を指していても、実際には150gかもしれないし90gかもしれない。不安要素を持ったハカリだということだ。多く計っていればお店は損をしていることになり、その商売は失敗となる。指示値半分の目方(質量)で売っていればお客を欺いたことになる。

 この店は、お茶以外の商品を量り売りすることもあるから、大は小を兼ねると考えて、このハカリを選んだのだろう。計量法において最小測定計量の制限の規程はないが、正確計量の義務は計る側にある。適正でないハカリを使用し、誤差が予想されるにもかかわらず100gとして販売する行為は、計量法に定める正確計量の義務に対する違反である。
 こうした不正計量を防止したり、取り締まる責任は地方公共団体にある。業務の担当は、計量検定所(都道府県)や計量検査所(特定市、特例市)である。計量検定所などの業務は、ハカリほかの検定ならびにハカリの定期検査のほかに、市中の計量が適正に実施されるようにそれを監視し、取り締まり、指導することも含まれる。このために中元期と年末のお歳暮期に商店などの適正計量実現のための正量取引強調月間が設定されて、計量行政機関は消費者参加の下、商品試買試験などを行っている。

 ハカリが正常でも、それだけで計量が正しく行われるわけではない。計量器の選び方を間違ったり、計り方が正しくなかったりすれば、誤った計量が行われることになる。何気ない計量行為に含まれる誤計量の要因は少なくない。計量制度によって正確な計量の実施が推進されることはあっても、この制度があるというだけでは正確計量は保障されない。
 正しく計る行為とその心構えの全体を、計量思想とか計量観念とか正量意識という。これが基礎にあってこそ正しい計量が実現し、計量法が定めた制度と複合して世の中が上手くいくことになる。

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