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日本計量新報 2011年10月2日 (2888号)

正確に放射能を計るため計量関係者は知恵を絞るべきである

 人にはそれぞれ、暗記が得意である、論理的に思考するのが得意であるなど、様々な得意分野がある。人はそれぞれ個性を持ち、何かしら秀でた能力を持っている。人の個性や能力を認め、適材適所の人事が実行されれば、組織は上手くいく。たとえば営業の部署で能力が発揮できなくても、企業のなかにもっと良い活躍の場があるかもしれない。人事担当、あるいは経営者の腕次第と言ったところだろうか。

 欲にかられたり憎しみをもったりしていては、物事が見えなくなる。物事を素直に見ることができれば、歪むことなく実相が見えるようになる。

 地球が丸いことや宇宙が広がっていることなど、どのような真実も観察を通じてわかったことであるが、そうした発見は、物事をある思い込みで判断してしまわない素直な心が背景にあってこそではないか。

 計量・計測にあたっても、物事を素直に見ていくという姿勢が一番大切である。歪んだ心で目盛りを見れば、自分に都合の良い数値を読み取ってしまう。はじめから計量を誤魔化そうとする人もいるから困りものだが、詐欺を働く心があっても、それを排除するような仕組みができていればいい。計量法は本来、そのように誤魔化して測る行為を許さないためのものである。
 
 福島原発事故による放射線汚染に対しても、曇りのない心で、怪しいところのない計測器を使って測定することが大事である。ところが、世の中に出回ってよく使われている放射線測定器のなかには、実際には測定の能力を備えていないモノがあることが、国民生活センターの性能テストで判明したから、事は重大である。

 国民生活センターが性能テストした放射線測定器は、中国製の1万円以上10万円以下の9機種であった。価格の高低にかかわらずテストした全機種において相対標準偏差(誤差)が30%を超えていた。特に、低い線量率を照射した場合、正確な測定はできていなかった。最小表示が細かく刻んであっても、測定で表示される数値は計測結果として意味をなさない確率が高いというから驚く。「多少の誤差に目をつぶって、目安として測る」というレベルにも達していない、まがい物さえ混じっているのだ。

 同センターは消費者に対し、暫定規制値レベルやそれ以下の食品・飲料水などの汚染を判別する目的でこれらの測定器を購入・使用することは避け、環境中の放射線を測定する場合、公表されているデータなども参考にして、測定値を直ちに信頼することは避けるよう、アドバイスしている。

 しかし、このアドバイスだけでは根本的な解決にならないことも明らかである。こうした測定器が市場に出回ることは防げないし、放射性物質の残留と健康への不安がなくならない限り、放射線測定器の需要は続くからである。

 正確に放射能被害の実態を把握し、曇りの無い判断をするため、計量関係者は、計量法において何らかの規制を設けるなど、放射線量測定における信頼性を保証する制度をつくるべきである。

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