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日本計量新報 2013年2月17日 (2953号)

計量協会が実施するハカリの定期検査費用の不都合な事実

計量計測関係の団体にはかつては文化団体の形式をとった団体があり、自らも文化団体と銘打っていたのであったが、現在のそうした文化団体の多くは役所に代わるハカリの定期検査の実施業務を主な仕事としている状態になっている。計量器の検査業務や講習会事業が主な事業になっていることなどもあって、純粋な意味での計量の文化団体は、あるいはなくなっているのかもしれない。計量が正しくおこなわれ、世の中の経済と文化と人の暮らしが豊かになり平穏な社会が運営されるためのしくみとしての計量制度と連動して、その考え方の土台となる「計量思想」の普及と啓発をするのが計量協会の業務であり、地方の計量協会の定款ではその目的を「計量思想の普及と啓発」と規定している。
計量に関係する仕事としてその製造、販売、修理、計量法の規定に準ずる計量管理を推進する工場・事業場関係者、そして計量士ほかの企業と人々とが集結して組織されているのが、地方の計量協会である。地方の計量協会は、世の中の自然な流れで計量器の販売に特別な社会的な重みが薄れていることもあり、計量器の販売事業が登録制から届出制に変更になって、再登録のための講習がなくなり、一度届け出れば更新手続きがいらなくなったことなどによって、かつて計量協会に入会していた企業と個人の退会が激しい勢いでつづいている。多いときには1000名を越す会員が所属した地方計量協会は少なくなかったが、ある協会ではこれが300名になり、200名になり、この先は100名を下回りそうな状態である。
 体温計の販売と血圧計の販売は販売登録が必要であったために、薬局などの人々は、販売登録の更新手続きの利便性のために計量協会への加入が、実質上必要であった。計量法の改正があって、販売登録は届け出に簡略化され、あわせて体温計の販売と血圧計の販売は販売登録は届け出そのものを必要としなくなった。このような法体制では、薬局などの会員を「計量思想の普及開発」の目的をもつ計量協会につなぎ留めておくことはできない。東京都計量協会の場合には計量法の改正以前に薬局関係の会員は退会していたのだが、現在の多くの地方計量協会では、薬局会員がいないどころかこれまで入会していた金物販売関係の人々も会に留まることが極めて少なくなっている。
 会員からの会費収入で計量協会を運営し維持する状態はすでに消えている。計量器の検定受検にさいして、その手数料の納付は計量協会が窓口となって販売する証紙によっておこなわれていた。この証紙販売の量がいちじるしく減じている。計量器の主な器種のハカリ、水道メーター、ガスメーター、電力量計、体温計、血圧計ほかにメーカー自己検定方式が導入されたために、計量協会などが手数料の納付の窓口になっていた証紙販売がいきなり皆無に近い状態になった。法改正の合理性あるいは是非はともかくとして、そうした法改正によって計量協会の収入が減少する状態になったことは事実である。
 計量法の根幹にもなっているハカリの定期検査の業務が、計量検定所などの都道府県の計量行政機関、そして計量検査所などの市町村の特定市などから、「指定」という名目のもとで実質上の「移管」がおこなわれている。都道府県と特定市が実施するハカリの定期検査の実施団体は地方の計量協会が担うようになっていて、他にいくつかの地方団体と企業筐体がこれを実施している。
 その指定によって移管されたハカリの定期検査業務の実施費用が余りにも人を馬鹿にしたような「予算編成」になっているのには驚かされる。地方公共団体にお金があるとかないとかいうことは全くの別問題であり、地方計量協会などがハカリの定期検査を真っ当に実施できるだけの費用を用意して、指定し移管することが必要である。
 昨夏に開かれた中部地区の計量ブロック会議の席上で、富山県計量協会副会長は、指定移管費用には必要な人件費が盛り込まれていないことの欠陥を指摘した。県や特定市のハカリ定期検査費用(予算)は、職員の人件費を除去して組まれている状態をそのままに、計量協会を指定して移管するから、きわめて不都合な状態が生じることになる。

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