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日本計量新報 2013年8月4日 (2975号)

生産設備としてのハカリシステムはハカリ産業の総需要の半分を占める

製品価格を下げることは競争に勝つ要件である。そのために生産合理化の設備をして、ある部門に従事する人の数を少なくする。量産は価格を下げる要素になる。こうしたこととあわせて、改良型の商品をつくって、客の目を引き、競争相手に対して優位に立つ。売上げを伸ばそう、利益を増やそう、大きくなろう、ということで、日本の企業は走れ、走れ、元気に走れ、と走りまくってここまでやってきた。止まったら失敗するかもしれない。とにかく走っていよう、ということで走りに走ってきた。いまの元気にやっている計量計測機器企業はそのようにやってきており、そうすることが真っ当なことであった。
 走りに走ってきた計量計測機器企業であったが、1960年ころに計量器の製造と修理の登録をしていた企業の7割近くがこの事業から撤退している。かつては長さ計工業会があって多くの企業がここに所属していた。今ではそれらの企業のほとんどは当時の事業構成のままではない。名前を変えたところや会社がなくなったところもある。計量器事業に従事する専業の事業者数の実数も減っている。
 計量法の規定にしたがって事業登録をして、その登録内容だけで事業をしてきた企業はあるときまでは制度によって庇護されて、一定の需要を特定の企業で分け合う状況にあったかもしれない。しかし高度成長期には計量法が規定する事業の分野は単純には拡大しなかった。軽工業から、石炭産業、そして鉄鋼と重化学工業と産業の花形が変化し、電機や自動車といった産業が隆盛し、その後にさまざまな産業が登場するという、大きな変化と計量法のなかの小さな事業分野でのこの枠にこだわった企業経営では企業の成長性は制限をうける。1960年から1980年までの20年間で計量法に事業登録する企業の数は減り、企業そのものが事業をやめるという事態が進行した。
 計量法の登録事業者の推移とその後の日本の経済発展を対比すると、計量法がらみで事業登録(現在はほとんどが届出)する企業は日本の経済発展と反比例して減少している。計量法が規定する事業は大事な事業であることは間違いないが、だからといって企業が大きくなったり、関連産業が大きくなるということにはならず、実際には計量法がらみの事業にこだわりすぎていては、企業は大きくならない。企業が大きくなる要件は計量法がらみの事業であることとは別である。発展する世のなか、拡大する産業などにおいて、計量計測に求められることがら、あるいは計量計測機器関連企業だからこそ実現できる技術や製品で、社会と産業の求めに応じることこそが、企業発展の要件である。
 目をほかの産業に転じてみよう。製品の一般的な改良や改善では用が足りなくなる事態が発生する。珠算の能力はそれ自体は人にとって必要なものであるが、いまではソロバンによって会計事務を運営しているところはない。また、計算尺を使うことは理工系の学徒に必要な技量であった。いまはどのような分野の人々においてもパソコンの利用能力こそ必須である。フィルムカメラを製造しているカメラメーカーはデジタルカメラをつくるようになった。この波に乗れなかった企業は市場から退いている。フィルムをどのように改良してもフィルムの市場は極小になるのでイーストマン・コダックはフィルムをつくらないようになった。富士フイルムは関連技術を応用し、もっている基礎技術を生かして事業転換して次の時代に対応している。
 はかり産業に象徴されるように計量計測機器産業は産業設備の内容が色濃い。はかり産業の場合には生産設備がらみの工業用ハカリの生産は全生産量の半分ほどを占める。工業分野に使われるハカリを含めるとその割合はもっと大きい。どのように産業の内容が変わっても生産設備がらみの計量器の需要は減ることがなく、生産にとって有効な特別仕様の計量設備は量産品のように値崩れをおこしにくい。計量計測機器産業、とりわけハカリ企業においては、生産設備がらみのハカリを製造して収益をあげている企業が多い。そしてこれらの企業が製造する生産設備がらみの事業の過半はハカリとして生産統計に集計されないことが多いことであろう。

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