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日本計量新報 2014年1月1日 (2993号)

世の中の計測分野に人を送り出すしくみがか細くなっている

地球は人がかかわって排出する炭酸ガスの増大にともなって温暖化している。太陽光の強さの変動ほかの要因があるが根本は炭酸ガスにあるとこの道の専門家だと自称する元東大教授がいう。温暖化要因のすべては否定されていて炭酸ガスだけが関与しているのだとつよく説くこの人は神になった。自説の正当性を主張するためにはあらゆる反論を屁理屈ではあっても論駆する。
 民主党内閣が成立したときに鳩山由紀夫首相は炭酸ガスの排出量を決定的に削減するという政策を国連などの場で述べて見栄をきった。日本が予定の量の炭酸ガスを減らしても地球全体の排出量に影響を及ぼさない。途上国は日本の重化学工業などが活発だったころの産業構造になっていて、石油や石炭を燃やして炭酸ガスをいま以上に排出する。
 日本の産業界の代表たちは電力を安く使うために原子力発電をつづけろ、という。安倍晋三首相は原子力発電を止めろという主張は無責任だという。小泉純一郎元首相は核廃棄物問題にめどが付けられない点を挙げ、日本で核のゴミの最終処分場にめどをつけられるとするのは楽観的で無責任だ、などと述べて原発を止めることを主張している。「小泉さんの元気な発言は大歓迎で、カッコイイ。私が言いたかったことを全部言ってくれた」菅直人元首相がこれを持ち上げ、菅政権が東日本大震災の前まで原発輸出を推進してきたことに関し「原子力の安全神話に自分自身が犯されていたのを恥じている」と頭を下げたが、これらの発言は原発事故対応の責任を司法の場で問われていることへの考慮もあるとみてよい。
 日本の電力需要を2年間原子力発電所が稼働しない状態でまかなってきた。いまは原発は一基も稼働していない。
 山梨県の日川の上流に上日川ダムがあり、ここから数十km離れて流下する葛野川に姫川ダムがある。山を隔てたこの二つのダムに横穴を通してその中間ほどに高さ54m、横幅34mほどのドームがつくられていて、ここに大きな発電機が4基すえられていて2基で発電をしている。発電後の排水を受けとめるのにもう一つの大きなダムが要るからこうしているのだろう。 原発の是非を論ずるには多くの観点がある。事故を起こさない、廃棄物の処理に困らないということがあるとは思えない。いまある原発は地震と津波に耐えられる状況で設置されていない。廃炉にするために費用などを含め、100年という年月でコストを計算すると原発は一番高いコストを有することになりそうだ。
 原発を止めるという前提ができることになれば、山梨県の上日川ダムの発電は4基を稼働させることになる。太陽光発電にも思い切って舵を切ることができ、太陽光パネルが大量に生産されるとその生産費は一気に低下して、発電コストが下がることが想定される。自動車では燃料電池車が実用の域に入ってきており、燃料電池も活用できる。自説を説いて神になる人がいるので、何が絶対かは単純ではない。福島第一原発では6000人ほどの人が働いている。事故現場周辺は向こう100年人が住む気になる場所ではない。たとえ放射線量が減少したとしても、子供を育てる人はここには住みたくないと思うはずである。
 世の中の経済の状態を推しはかる指標としてGDPがある。ここに占める国民の消費に属する費用は5割を超えている。サービス業をふくむ第3次産業が一番大きな占有率をもつようになっている。サービス業を意地悪くとらえると自分でなすべき食事などのまかないを人にさせてそれに料金を支払っているということだ。自分でつくって、自分で食べるというその行為はGDPのどの項目にも盛り込まれない。日本でつくって海外に売るという輸出産業は、それを買うという海外の人が暮らすその国では消費としてGDPの数字を上げる。日本の企業が海外でモノをつくって海外で売る、というその行動もまた日本のGDPの数字と無関係として扱われる。GDPという経済指標が悪魔のようにみえてくる。
 第3次産業が膨らみつづけている状況にあって、大学の計測関係の設置学部の縮小と弱体化が進行しているようである。東京大学の工学部に計測工学科があったがこれがまた別の形式になっている。世の中の計測分野に人を送り出すしくみがか細くなっていることを憂える国の計測の研究機関と長をしていた人がいる。

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