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日本計量新報 2014年1月12日 (2994号)

測ることは知ることであり、知ることは評価とつながる

東京の新宿駅の高層階にあるレストランから見下ろす「下界」には光の海が広がる。燃えた石油が水を湧かしてタービンを回して電気を起こしており、電灯が光り輝く。円が安くなると石油代がかさみ貿易赤字が大きくなる。輸出産業は赤字経営が何もしないままに黒字になる。産油国は働かないでも暮らすことができるという世の中をこのままにしておいてよいのか。
 原発推進を政府と一緒になってやってきた電力会社がその原発でつまづき、東京電力は福島第一原発の廃炉もままならない。核廃棄物の処理場としてその重荷を背負わせてきた北の辺地ももうこれを受け入れない。どの地方公共団体も受け入れることはない。原発は日本では稼働できそうにない。原発を動かすことは科学であったのか、それはエセ科学であったのか。敗北したのはどちらだったのだろう。残された残骸物は大きすぎる。原発施設の計装関係とそこに設置される計測機器などは、電力会社が勝手に仕様を決めて納品させているのだが、機器が故障すると計測機器メーカーの責任にするのがいつものことだ。原発ということで秘密の囲いをつくり、その内側には立ち入らせない構造になっていて、ここに原子力村ができていた。
 原発を止めると決めればそれに代わるエネルギーの創出のための工夫がたくさんでてきて、そのための投資も促進される。ソーラー発電、風力発電、水素を燃やしてエンジンを動かす発電などがいま以上に普及する。この関連の開発に計測機器メーカーが動員されている。温度を測る、水や気体の流速を測る、圧力を測る、質量を測る、トルクを測る、ありとあらゆる要素を測ることがここではおこなわれる。ここで測られたことはそのまま知ることにつながっており、知ることは評価することに連動する。すなわち計測は評価につながる。原発事故の根本原因は原子力発電の機能性などを確認しそれを評価することをしなかったことにある。それを世間では原子力安全神話と呼ぶ。
 新宿駅のそばには東京都庁があって都知事は東京電力の原発事故を勇ましく追求して400万票の得票で当選した。その都知事は東京信濃町の慶応大学病院横にある東京電力病院の売却にかかわって金銭の授受があり、信任を失って辞職した。あれこれのことを考えて自分は物事をよく知っていると思っていても、人が考えていることは案外に狭い範囲に限定されていることが多い。ひごろの新聞、テレビ、ラジオ、雑誌、ほかの図書などから得ている知識などや、自分の興味の範囲は、そうしたマスコミが自分に押しよせてきて自分の頭を覆ってしまっていることが多いと考えたらよい。東京オリンピック招致決定から3カ月で都知事の座を去ることになった人をみれば、どのような立場の人でも有頂天になっていることはできない。

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