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日本計量新報 2014年10月26日 (3031号)

地震台風火事親父 物事は計測によって解き明かされる

旅客機から降りてくる人の耳に体温計を当てて健康状態を確認する光景がテレビ報道にあった。エボラ出血熱による感染者数は2014年10月17日の時点で9216人、死者数は4555人ほどであることを世界保健機関が発表している。流行の感染症としては現在はエボラ出血熱が取り上げられているが、感染症に詳しい医療従事者はほかにも警戒すべき感性症がありエボラ終結熱だけをけたたましく叫ぶことに異議をとなえる。
 その世界保健機関は2012年の自殺者が世界で約80万4000人であることを発表している。2012年の日本の自殺者は2万9000人である。病気を苦にして自死する人、生きることへの心のあり方を保てない若い世代もあり、事態は複雑である。お金がなくなれば生きていけない社会のしくみになってしまったので、自殺者は経済が生み出していることになる。昔は帰るべき農村があればそこに非難すれば雨露だけは防ぐことができた。いまは隅田川縁や荒川河川敷の草のなかのブルーシートの覆いのなかで過ごす人が大勢いて、その人たちは普通の人が考える仕事に就くことができない。
 なにをニュースとして取り上げるか、報道のあり方が常に問われる。例をあげると、10月10日ころに日本にやってきた台風19号の状況報道にNHKは11日と12日の両日、他のことはすべて捨てて全日台風を追いかけた。テレビ、ラジオ、新聞などがどうしてか「報道機関」と称されるのである。どういう組織と連動する機関であるのかというと、国や地方公共団体など役所に付随して、役所が世のなかに出す命令を含めた事柄を自動的に伝える伝言装置であるということで、昔のなごりか、その性質を素直な「報道機関」という文字にしているのだろう。
 台風19号報道におけるNHKは気象庁の報道機関であった。この方面に関連して大きな問題はわかったこと、わかっていることだけは遮二無二伝えるのであるが、半分ほど分かっている事柄や、それが及ぼす危害の恐ろしさに関連しては、ほとんど伝えない。木曽の御嶽山(おんたけさん)の水蒸気爆発による死者とその被害がその事例である。御嶽山の火山活動の観測装置である傾斜計は1つしか設置されておらず、もう1つの計測器は故障していたことが伝えられている。火山活動による地震の観測はなされていて、噴火前の活発な地震がとらえられていたが、これを水蒸気爆発と連動して考える関係の人がいなかった。
 エボラ出血熱、御嶽山の水蒸気爆発、台風の内容の観察は実際には物事を計測の数値にすることだ。そうしてみると計測は知るためにある、ということになる。人は知るべきことを知ることをしっかりととらえて、知るべきことのために計測のしくみを用意して対処することが肝要であることになる。
 知るべきことを放棄していないか点検することは大事である。そしてそのことを知ることができれば物事を革新したり、計測の向こうにある目的を実現できることに思いを馳せることをしたらよい。その意味で地震、台風、火事、親父といった物事は計測によってその状態を観測して、その対応もその謎も解き明かされる。

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