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日本計量新報 2015年1月11日 (3040号)

勤勉に働き努力し、意気軒昂に生きていくこと

映画スターの高倉健と菅原文太の両氏が相次いで死去した。83歳そして81歳だった。癌疾患で倒れたのであるがもっと活躍してほしかった。高倉健氏は2013年に文化勲章を受章したが俳優になることを父親は喜ばなかったという。菅原文太氏は東日本大震災が発生したときに故郷の宮城県をはじめ被災地で、公私ともに苦しい生活の続く人々が多いなか「どういうテーマであれ、今は映画を撮っている時じゃない」として、2013年1月に公開された「東京家族」(監督・山田洋次)の主演を降りた。「それは監督も同じ考えだった」と述べている。
 菅原文太氏は最近までラジオ番組「菅原文太日本人の底力」のパーソナリティをし、テレビドキュメンタリーのナレーターなどをしていた。また国民運動グループ「いのちの党」の代表として活動し、死去直前には、沖縄知事になった翁長雄応援に現地に出かけていた。菅原氏は小沢一郎氏と連携して「東北の党」をつくる計画があったという。その菅原氏は命の大切さと反戦平和を訴える一方で、現代の日本人の心が軟弱になっていることに憂えていた。政治家も評論家もこのことにふれないが、日本人として持つべき矜持(きょうじ)を語っていた。
 作家の井上ひさし氏は宮城県仙台第一高等学校在学時に菅原文太氏の1年後輩として新聞部に在籍し、その原稿に菅原氏が朱をいれており、ともに世に売れてからも千葉県市川市の井上ひさし宅を菅原夫妻が訪ねて昔を語っていた。その話が書かれた小説が『青葉繁れる』であることを井上ひさし氏の元夫人が明かしている。それは青葉繁れる城下町の仙台市で名門高校の落ちこぼれ4人組が巻き起こす青春劇であり、哀愁にみちた笑いを誘って楽しい。女優の若尾文子は隣接する宮城県第二女子高等学校で井上と同学年であり、小説のヒロインのモデルにされている。
 政治家が表向きでは国民に迎合して、国と地方公共団体の経費を人気取りのために使ってきたのであるが、これをこの先つづけることができなくなっている。年金制度は壊れないといって国と役人が嘘をついてきたが、少子・高齢化と現役労働人口の減少、そして人口減少に連動するGDP(国内総生産)の低下はこの制度の維持の前提を打ち砕いている。それだから消費税の10%への増税だと法律で決めているが、この実行を遮二無二押し進めると、GDPの6割ほどの額になる消費が縮んでは産業は振興せず税収は落ち込むというジレンマがある。
 政治と政治家が国民に媚びず、国民はきわめて平凡なこと即ち、勤勉に働き、努力し、意気軒昂に生きていくことの2つがうまく調和しなくてはならない。国民のあり方はそのまま企業に働く人々のあり方である。儲かる企業にあっては奢ることを戒め、自らを素直に振り返ること。他方では少しの失敗があると意気阻喪し、いじけの心情にあふれてしまうことがよくある。どのような立場の働く人にあっても自らが心を振るわせて、持ち場の仕事に全力で打ち込むことが大事だ。

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