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日本計量新報 2015年1月25日 (3042号)

透かしてこそ見える物の実態

都市を離れて地方に出かけるとそこには日本の農村の風景が広がる。農業の放棄地が見あたらないのは日本人の生真面目さ、働き者のなせることである。それでも子細に見ていくと、ここにもあそこにもということで草木が伸びる荒れ地があり、水田も耕してはならないために手がつかずに青田の横で雑草地になっているその割合は少なくない。
 商売にならない農地の持ち主が老齢で家に引っ込んで、体をもてあましている近所の老人が機械を買い、肥料を入れて、苗を100円で求めて営農すると、できあがった野菜は20円で売れれば上等であり、250円にはならない。農協の直売所で売るには白菜などは青虫がいないように農薬を使わなくてはならない。農薬も要り、人の手間もかかる。
 野菜は中国から入るものが流通の主流である。レタス、キャベツ、サツマイモ、柚(ゆず)など地域の特産品があっても、中国の野菜はいつでも安く売られている。八街市の落花生は中国の物の何倍もする。美味さははるかに上であっても中国の落花生には負けてしまう。
 烏賊(いか)などの海産物も外国物が増えている。商品に記載された表示を確認していくと驚くほどに外国産の魚が多い。日本が産地であるように書かれていてもその魚は外国産であることが少なくない。工業製品の日本製を探すのが大変なほどにこの分野も外国製が増え、中国、タイ、ベトナムなどの文字が並ぶ。外国でつくる、外国産は工業製品が先であった。
 身の回り品の計測器の東アジア産は普通のことになった。日本の企業の考え方で日本人の企画で東アジアで物をつくることもあれば、向こうの人々が考えて日本の企業に売り込んで、日本人がそれを買って自社ブランドで売り出すことが増えている。かつては中国製の衣料品は幅が狭く股上も浅くて使い物にならないものが多かった。日本の大手衣料品メーカーの商品にも似た傾向がある。それでもノーブランド物に比べれば使える品物が多い。ブランドの意味をここに垣間見る。
 賃金、土地の使用料、工場建設費用などを日本の現状と比較すると、中国の場合は格段に安かった。現在、その費用は急騰していて工場施設をベトナム、タイなど別の国に移す動きが広がっている。技術が確立されていて、どこで作ってもまずまずの物ができるとなると、賃金、土地の使用料、工場建設費用に3倍の開きがあるとそこに移っていくことになる。日本のデフレはお金が回らないこと、賃金が実質下がっていること、新技術による新規の産業が起きてこないこと、人にも企業にも元気がないことなどの結果であり、この原因の1つは内外価格差だ。多重な雇用形態によって大企業が発表する賃金は表向きのものに過ぎない。
 日本の労働人口は30年ほど先には半分に減る。人の数も減る。ホームセンター、大型衣料品店、お酒のディスカウントストア、スーパーマーケットなどの大型店舗ができて、コンビニエンスストアが幾つもできるようになると、駅前にあった町の商店街には人は足を運ばない。消費が一定、あるいは低下しているからだ。
 計量計測機器産業においては身の回り品は大量に売れる。しかし競争は激しく価格は常に下がる。工業分野、農業分野などでの選別やチェックなどの作業をする工業用の計測システムは、生産金額、売上金額としては非常に大きい。ハカリ分野では生産する数量の8割ほどに達する体重計、料理用はかりなど家庭用ハカリの売上金額はハカリ生産全体の1割ほどである。
 生産される数が1割ほどの工業用ハカリの生産金額は全体のうちの6割ほどを占める。ここでは生産設備に含まれているためにハカリの製造として数えられないことがあるので、この分野の規模は予想より大きい。金額だけで見ていくとハカリとは生産設備であることになる。

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