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日本計量新報 2015年3月15日 (3049号)

会員精神に富んだ参加者と主役のようにみえる発言者

日本の総理大臣がモノをしゃべるとキイキイと騒がしい。大将は泰然自若としているものだが政権政党はいまはそのようなことではやっていけない事情があるのだろう。計量関係の大きな会合での議論はどれほどやかましくてもよい。質問はというと皆黙りこくっているのが日本の人々だから少しは威勢のよい声があがるくらいが望ましい。会合で発言する人の労を多とする。
 計量関係の会合では議論の時間を用意しないようになっている。声がでないからということもあるのだろうが、中央官庁や地方公共団体からの来賓に意見をし質問攻めにしたのでは、次回からの出席が危うくなるという配慮があるのだろう。関東と東北地区の場合は別であるが、役所への配慮が十分でもてなしを旨とする地域ではどこまでも役人を立てる。役人を攻撃しては自分が所属する企業にとって不利だからということもある。よいしょ、よいしょとやっていて気の抜けたビールを飲むような会合ができあがる。
 そのようにしている間に役所の側はハカリの定期検査を例にとると、計量法の指定定期検査機関制度にのって役所が実施してきたそれを計量協会や信用の高い民間検査会社に移してきている。それが進行して役所が直にハカリの定期検査を実施している事例は僅少になっている。特定市制度は県が実施するハカリの定期検査を市が代わっておこなうしくみであり、その仕事の大半はこれであったから、定期検査を市が直接におこなわなくなると職員は要らなくなる。10名いた計量担当の行政職員が1名に減り、所によっては兼務になっている。県なども同じであり、計量行政職員の数は極度に減った。減った理由のもう1つは計量器の検定の業務が指定製造事業者制度によって製造会社が自己検定できるしくみになったからだ。
 計量行政を専任で担当する県の職員と市の職員が極限を超えて減少するとその県とその市の計量行政への意識が消える。計量法はハカリの定期検査を実施しろ、ガソリンメーターの検定を実施しろ、タクシーメーターの検定を実施しろ、指定製造事業者の業務を確認しろ、ほかをすべきこととして明瞭に書き込んでいるのに、この事実を知らなくなる。そうするとハカリの定期検査を実施させている指定定期検査機関の運営が真っ当にできるほどの費用をここに充てることをしなくなる。これだけの費用が必要だ、ということがあっても現実を知らない行政担当者は、ハカリの定期検査の実施はどこまでの観念の世界に属するから、その運営費が少しづつ削られて限界を超えてしまっていても、それをさらに削減する予算担当者の強腰に負けてしまう。
 役所の人々が集まる会合ではグループディスカッションなどを取り入れる工夫もみられるが、名目ではなく実際に計量行政に従事する国と地方公共団体の職員の総数の把握もおぼつかなくなっている。個別の県や市では公表するのがはばかられるほどに職員の数が減っており、職員が1人というのではなく兼任で半人という事例は多い。そうした計量行政職員の会合に比べれば計量士の団体と計量協会などの会合は当然とはいえ、誰にでも開かれている。ここでは良いも悪いも発言は外に向かっても知らされ、賛同が多ければそれが世論となり、世のなかを動かして、計量法の改訂にも結びつく。
 会議の議論はその会議に参加者が集まらなければ意味をなさない。おおぜいの人々の前で意見を述べる勇気はなかなかでないものであり、発言する人の気概は讃えられる。発言する人はいかにも主役のようにみえるがそうではない。そうした場面をつくっているのは会への愛着と会に寄与するという会員精神に富んだ参加者である会員なのだ。世の物事は1つのこと、そして1人では成り立っていない。

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