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世界が認めた理想の単位SI(国際単位系)(97年11月9日号)


計量単位のこと−いま日本でも世界でもSI単位に変わりつつある

●文明は計ることから始まった

 「文明は計ることから始まった」(日本計量史学会副会長岩田重雄氏の講演タイトル)といわれるように人が数を数えたり、物を計ったりすることはありとあらゆるところで自然におこなわれている。

 計ることを「計量」するというが、その量はそれぞれ計るものによって、いろいろな単位で表される。例えば重さ(正確には質量)はgとかsで、少し古くは貫とか匁で表された。長さはm、pなど、古くは尺、寸など、このほかポンドとかフィート、インチなど外国の単位にはいまでもときどきお目にかかる。

 この単位あるいは呼び名は昔から各国ともいろいろな変遷を経ながら変化してきている。ところが貿易をはじめ科学・産業などあらゆる分野で世界的な交流がなされてくると、世界どこでも、誰でも同じ単位で同じ呼び方がなされ、しかも同じ量であればお互いに換算し合う不便さもなく、この上なく便利であることはいうまでもない。

●メートル法とはなんのこと?

 そこで一八世紀末、フランスにおいて大変な苦労をしながら実現したのがメートル法といわれる単位である。この単位の合理性は世界的にみとめられ一八七五年にメートルに関する国際条約が締結され世界的に採用の統一がはかられたのである。日本をはじめ世界各国がこれを採用して現在に至っている、いわば世界共通の単位である。

 二十一世紀を迎えようとしている今日、ようやく各国ともメートル法を主体とした流れに、とくに世界交流の分野ではほぼメートル法は定着したといえるだろう。各国ともそれぞれ国内的にはメートル法以外の単位が日常生活と結びついて習慣的にかなり使われているものもあるが、科学、産業、経済、貿易、情報、通信など国際的な流れとしてのメートル法の歯車はもはや止められない状況である。

SIとはなんのこと?−完成されたメートル法

 ところが、近代的な社会を迎える間に極めて多くの単位が必要となり、つぎつぎと単位を追加していく過程で、同じメートル法でもいくつかの単位系に分かれ、分野、あるいは国によってそれぞれ異なる単位系を使うようになってきた。例えばCGS単位系とMKS単位系では同じ量でも単位の名が異なったり、MKS系ではキログラムは質量であっても重力系ではキログラムが力と同じ量の重量のことであったりする。

 物理学者は主にCGS単位系、工学者および技術者は主に重力単位系を用いた。これらは学校教育現場でも異なった単位系を習得することとなり、複雑な単位の変換と換算をする知識が求められる。

 そこでこのメートル法をさらに合理的なものに整理しようということから、ここに「ひとつの量にひとつの単位」として登場したのがSI(国際単位系)である。いままでのメートル法もこのような理念をもってはいたが、前述したような事情から複雑になってきたのである。SIはいわば現時点における完成されたメートル法といえなくもないだろう。

●SI化への切り換え作業

 SI採用は前段階を経て一九六〇年、メートル条約に基づく国際度量衡総会において採択され、その後日本をはじめ国際的にも、国内的にも採用活動が進められてきた。

 日本の計量単位をSIに切り換えるという大事業は、一九七〇年代から徐々に開始され、まず日本工業規格(JIS)に記載されている各種の単位をSIに書き換える作業から着手され、とくに産業界を中心にSI化が進められた。

 従来から使い慣れた単位を切換えることは容易ではない。とくにSIへの切換えは科学技術や産業界に関するものが多く、綿密な切換え計画と緻密な換算とその実施は容易でないことは明らかである。

 例えばかつて日常使われてきた従来の尺貫法による一貫目をメートル法による三・七五キログラムと呼び換えたり、一尺を三〇・三センチメートルとしたり、あるいは一〇〇坪を三三〇・五七平方メートルと呼んだりしたように、昔の尺貫法をメートル法に切り換えることさえ容易でなかったことはまだ記憶の新しいことである。

●単位は計量法で決めている

 さて、我が国の単位をきめているのは「計量法」という法律である。これは戦前の度量衡法(明治二十四年公布)が戦後大改正されて計量法として生まれ変わったもので、一九五一年(昭和二十六年)六月七日に公布されたものである。計量法は単位のことばかりでなく、計量器の製造をはじめ、計量器の検査・取締を中心に世の中で計量行為が円滑に公正に行われるようにいろいろな規制をしている。

●計量記念日とは−6月7日から11月1日へ

 この計量法もその後の社会情勢の変化にともなって度重なる改正を経ながらも公布された六月七日を「計量記念日」として、毎年その日を中心に半世紀近くの四十年以上にわたってながく全国で様々な行事が行われてきた。

 ところがさらに時代の要請に合わせて計量法を大改正することとなり、その結果一九九二年(平成四年)五月二〇日に改正計量法が公布された。この改正計量法は翌一九九三年(平成五年)十一月一日から施行されたが、以後この十一月一日を「計量記念日」とすることが通商産業省によってきめられた。

●計量法はSIの使用を課す

 このように一九九三年(平成五年)十一月一日に新計量法が施行されたが、このとき計量単位はSIを基本としたものに全面的に書き改められた。計量法は計量単位を定め、その単位を法定計量単位と非法定計量単位に分け、非法定計量単位は取引や証明に一部の分野を除いて使用してはならない定めとなっており、違反には罰則を適用するなど厳しい措置をとっている。

●段階的にSIに切り換え

 法定計量単位はメートル法を建前としSIを全面的にとりいれているが、SI以外の一部非メートル系の単位が日常的に取引又は証明に使用されている現状を考慮して、それらの単位も一定の使用範囲を定めて例外的に使用を認めているものもある。

 計量法もかなりSI単位と非SI単位が同居しているが、SI単位を主体とした法文構成にし、非SI単位は原則的に一定の三段階の猶予期間を経て廃止することにしている。この猶予期限を設けられた非SI単位は平成七年九月と九年九月期限のものはすでに切換えを終え、現在は猶予期限が平成十一年九月三十日の単位【表((社)日本計量協会提供)だけがのこされている。

 この猶予期限のある非SI単位が猶予期限を迎えると原則的にはSI一本になるが、一方長期にわたって存続する非SI単位もかなりのこされている【別表1】【別表2】。それはSI単位のないもの、SI単位はあるが国内外でひろく現に使用されていて廃止によってかなり混乱するもの、などである。

 非SI単位使用の猶予期間を経て廃止される非SI単位は直ちに使用できなくなるし、非SI単位目盛の計量器は製造販売はできなくなる。しかし、猶予期日以前に非SI単位を付した商品または物件、文書などは猶予期限を経ても取引又は証明に用いることができる。また猶予期日以前に製造された非SI単位目盛の計量器は期限後でも販売できるが、その計量器を購入し、取引又は証明に用いるときはSI単位に換算しなければならない。

●生産管理用などでも切り換えを促進

 計量法は取引又は証明に使用する単位についていろいろ規制し、罰則も含む強制力をもっているが、取引又は証明以外の分野まで拘束しているわけではない。SI一本になったからといって家庭をはじめ工場、事業場、学校、病院などで内部だけで使用したり、生産管理で使用しているものなどは、外部に対する取引や証明に使用しなければ、非SI単位あるいは非法定計量単位を使用するのは差し支えない。

 しかし、SIが国際的、国内的にあらゆる分野で完全実施を求められているときに、できるだけはやく、いかなるところでもSI単位の使用が望まれる。このため、計量団体の中には自社内で生産工程(設備管理や品質管理等)、工程管理など使用頻度の高いところで使用している非SI単位も早急に切り換えるようにPRしている。

●各種法令も逐次整備

 計量法はSIにできるだけ切り換え、残される非SI単位を限定して使用できるよう構成されているが、同時に計量法以外の各種法令、条例等で使われている非SI単位を計量法にもとづいてSI単位に書き換えていく作業が各省庁並びに地方ですすめられている。

●各種の参考書

 「単位」に関する本はいろいろ出版されている。比較的最近では手軽な一般向き読物として「単位のいま・むかし」(小泉袈裟勝著、日本規格協会、続刊あり)。

 「歴史の中の単位」(同著、総合科学)、「単位の進化」(高田誠二著、講談社)はやや刊行が古いが歴史物だけに内容はいつまでも新しい。辞典物には「単位の辞典」(ラテイス編)、「量の表現辞典」(高田誠二著、朝倉書店)が目につく。SIに関しては「SI化マニュアル」(日本計量協会)、「国際単位と品質規格」(三井清人著、ほるぷ社)などやや専門的な事業所向けなどがある。


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