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日本計量新報 2007年4月8日 (2670号)

計測技術とその文化は国民と産業の所有物である

計量計測の技術と知識がどこに蓄えられているかというとその実態はこれを使う企業であり計量器をつくり供給する事業者などである。世の中はISOとかさまざまな品質等の管理技術とその手法があってモノやサービスがつくられたり供給されているように思い描いているが、これらの仕組みは技術の表現形式の一つであるだけだ。ISOなどの認証条件に適合しているから管理体制や関連する技術が優れていると思いこんでいる認証取得事業者があってもそれは大いなる勘違いである。
 小さなモノを精密に計り、大きなモノも精密に計り、精密性の要求されないモノはそれなりに計り、あるいは直接に計らなくても計ったのと同じような結果をもたらす技術とその管理体系は、その事業場や企業の計測技術である。そして計測技術の神髄は計れないモノを計れるようにすること、それを数値として計り取らなくても計って管理したのと同じような結果をもたらすことである。計れなければ分からないのは事実であるけれど、何と何をどのように計ればそのモノやサービスの機能や品質を実現することができるのかを設計し実行することが計測技術であり、計測の管理者や技術者はこれを追い求めている。
 モノづくりの企業はつねに競争を強いられている。日本の自動車産業はアメリカの牙城に攻め込んでいて勢いが凄いが、こうした自動車産業における製品の性能・機能や品質は計測技術をその基礎技術として実現している。もちろん自動車は感性に訴える商品でもあるから市場のさまざまな要求を他社に先駆けて満足させることは重要なことである。そして表面に現れる格好良さを実現する背景には製造技術や加工技術などさまざまな技術があり、そうした技術に横断的かつ直接的にかかわっているのが計測技術である。だから企業の勢いが一番あるトヨタの計測技術は、総合すると世界一であるということができる。
 計量計測機器製造企業は産業などの市場の要求に応えそして計測の新技術で産業界に新しい技術段階や舞台を提供する。無理と思える需要先の計測技術への要求が新しい技術を産み出す。計量計測企業は需要者たちの産業要求に鍛えられ育てられる。
 日本には計量標準の研究機関があって高度な計測技術の研究開発に実績を残して学術と産業社会その他に貢献してきた。計量管理理論とその技術体系構築と宣伝普及にも大きな役割を果たしてきている。そしてこの日本は「計量管理」に対応する計量法の規定による「適正計量管理事業所」の制度があってここに配属される計量士によって、ハカリが適正に管理されているならば、計量法に基づくハカリの定期検査が免除されている。計量士の法的な業務はハカリの定期検査の代行と、適正計量管理事業所におけるハカリの管理の結果としてのハカリの定期検査の免除だけである。
 計量士による計量管理は計量法の内容に照らすとハカリの管理だけであるので、ハカリの管理をもって計量管理だと決めている関係者は少なくない。愛知県の計量士でトヨタ系の製造事業所で仕事をしていたある計量士は「計量士の仕事は計量管理であって計量器の管理ではない」と言い切る。そのようななかひどい計量士になると所属する事業所に対して計量法と関係の役所の存在を言辞と態度にちらつかせて脅かすということがある。このようなことはとんでもないことで、適正計量管理事業所におけるハカリに定期検査の免除という法的措置は、ハカリなど計量器を管理している実績をもとにこれを定期検査に代わる行為として承認されたものである。
 適正計量管理事業所などに所属する計量士はその企業のISOの品質管理などの規定に計測管理としての計量器の標準とのトレーサビリティーと校正などをしっかりと結びつけて文章として織り込むことをしている。これがまだできていない事業所や計量士は他の事例に学んでそれをするとよい。計量士と計量管理が企業の品質体系の邪魔になるなどとんでもないことであり、例にだした愛知県の計量士はそのような事例をいくつも見ているから歯がゆいことであろう。
 計量計測技術とその応用の結果としてモノづくりとサービスの供給がますます盛んになることは日本の産業が発展することでもある。計量計測技術は産業社会に帰属する基盤技術であり、それは日本の産業文化に帰属する計測文化でもある。計量計測技術とその文化は国民と産業に帰属するその人々の所有物である。計量計測の世界に関係する人々は計測技術がわかっていてそれに長けた存在だと考えてはならない。この世界に所属する人々がなすべきことは、国民と産業の計測に対する要求としての需要に一生懸命に応えることである。


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