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日本計量新報 2007年9月30日 (2693号)

知識経済時代には計量器がセンサーとなって生産設備が知能化する

計量器、計測器、測定器などと呼ばれる計るための器具機械装置はモノサシ、マス、ハカリを想起することが多く、それ自体は間違いではない。化学、鉄鋼などの産業など大がかりな設備を使ってモノ造りをする分野ではオートメーションのシステムそれ自体が計量計測設備であり、さらにこのなかにさまざまな形で計量計測機器が組み込まれている。このようにして組み込まれている計るための器具機械装置は単体のサシ、マス、ハカリの生産数量に比較すると数としては少ないとしても、金額としてはずっと大きいことが、工業用のハカリと簡便な体重計や料理用ハカリの生産・販売統計から推しはかることができる。計装関係の企業、エンジニアリング企業、総合商社などが大がかりな設備の受注に関わり、計量関係の企業はこの方面の下請けの立場にあることが多いものの、規模の小さな設備は直接に受注することも少なくない。
 100円の生活雑貨を国内2、400店舗、海外400店舗で売上高 3、300億円を売る大創産業という会社と比較すると、はかり産業の国内年間生産額711億円(2006年度)ほどという規模が小さく見える。はかり産業にはメンテナンス事業が付随するので規模は20%ほど大きいと考えてよい。また生産設備や計装設備などの工事の売り上げ金額は小さくても数千万円からで1億円、10億円ということがあり、これらの工事をはかり企業が主体となって実施して企業の売り上げに計上しても、工業会や政府の生産統計に記録されないことが多い。計量器の生産統計の数値に反映されないビジネスが存在し、そのビジネスは計量に関係する総合知識と卓越した技術を要するものであり、その知識と技術が特化されていれば競争なしで望む販売価格が実現することが多い。
 長くその業界にいると既存の一般化した技術で価格の安い商品をつくるビジネスをしがちであり、こうした分野では事業の成長は多くを望み得ない。計量器関係の事業でも同じであり、廃れていくビジネス分野で危機感もなく事業を続けている企業は苦境に陥ることになる。はかり産業は生産される計量器の数量の側面からは簡便な体重計や料理用のはかりの産業として見える。しかし生産の規模という観点から見ると工業用の生産設備の産業として見えるのである。事実、はかりをはじめとして計量器製造会社で売り上げ規模の大きい企業のほとんどは一般消費者向けの計量器の製造会社ではなく、法人向けなどの各種計量器の製造販売や生産設備がらみの計量器の製造販売会社である。
 計量器事業者のビジネス展開の方法として一般的なのが、これまで築き上げてきた流通ルートの上にさまざまな新規の商品を載せている方法である。計量器の会社がスーパーマーケットで水を販売していることに驚く人がいるが、もっと子細に観察すると電子棚札システムはもちろんのこと、店舗全体を管理するPOSシステムも供給している。農業関係の設備は計量の要素が多く含まれていて、この分野で活躍している優良な計量企業がある。生産財がらみのビジネスをしていて、一般消費者向けの商品を供給していない会社は消費者には見えにくいこともあっての知名度は上がりにくい。しかし、自動車も鉄も食料品も計量技術と計量器が大きくかかわってつくられている。
 コンピューターが機能を飛躍的に向上させ、これとインターネットを重要な構成要素とした情報社会ができてくると、工業生産の時代と重ね合わさって知識生産の時代になる。工業生産の時代にあった機械の大量生産の設備や商品の大量生産の設備に関係する産業とあわせて、知識経済の時代には知識の生産設備やその仕組みをつくる産業が発展する。計量することは知ることであり、知ることは知識を得ることである。知識を集めると知識と知識が重ね合わさって知能の働きをするようになる。さまざまな計量器がセンサーの役割などを果たす仕組みの集合によって工場や生産設備全体が知能化する。


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