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日本計量新報 2007年10月14日 (2695号)

企業繁栄の道は新市場開拓、新概念計測器開発、生産力向上のいずれか

生産性の向上あるいは生産力の向上は、人に自由の時間をもたらす要因である。かつて日本の農業人口は8割を超えており、米国でも9割を超えていたものが、今では1割未満である。農業分野の機械化が進行して農業の生産力が向上したため、かつての1割程度の就業者で農業分野の生産がまかなわれるようになった。
 農業の生産力が向上したことで人は自由の時間を確保したかというとそうではない。自由になった労働は繊維、製鉄、自動車などの諸産業に振り向けられた。別の産業に移動した農業労働によって社会全体としての富の生産が増大した。その国の人々が全体として保有する富の増大は、ある意味で自由の獲得である。現代の世界はアフリカ諸国を含めると農業の就業人口がいまなお一番多い。
 生産力の向上と市場の規模の拡大が同じ割合であれば、関係する産業に従事する企業と従業員は同じ規模で推移することができる。計量器産業においても、市場規模が拡大している状況においては、関係事業者が同じように利益を確保して繁栄した。ある企業が生産方法を改善して生産力を大きく向上させると、これに対抗できない企業は同じ事業によって生存することができなくなった。複写焼き付け方式で直尺、曲尺などが生産できるようになると、手打ちで目盛りを刻む方式の事業の継続ができなくなった。生産力の急激な向上があったために寡占化が進行した計量器産業の業種がいくつもある。

 計量器産業は、どの器種においても生産力の向上が企業繁栄の基礎である。仮に生産力の向上を抜きにして生き残っていこうとすると、世間の水準に比べて格段に劣悪な経営状況を強いられる。環境計測機器分野、分析機器分野の企業が総じて繁栄しているのは、この分野が新しい概念・新しいカテゴリーの計測機器として新規の需要を獲得していることが要因である。長さ計分野においては、モノサシ、巻き尺、さらに測量器といったアナログ式の計量器がデジタル式のものに変わったことなどもあって、測量機器関連企業の一部企業は東証の1部上場をはたしている。計量器産業に従事する企業が繁栄を継続するためには、現在の技術・能力を利用して国内外の新市場を開拓していくこと、新しい概念・新しいカテゴリーの計測機器市場を開拓していくこと、生産力を向上させて品質・価格で他社製品に対して優位を確保すること、のどれかが必ずからんでくることになる。


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