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日本計量新報 2008年4月13日 (2719号)

時計がアナログ表示であることとバネ式のハカリの奮闘

時計は、時間や時刻の計測器であり、渦に巻いたバネがもどるときに発生する力をもちいていた。時計がクオーツ方式のものに完全に移行してしまったなかで、バネによって発生する力を用いて質量を計測するハカリはしっかり生き残っていて、いまなお製造されるハカリの数としては一番多い。水晶振動子(クオーツ)に電荷を与えると固有振動数が発生することを利用したのがクオーツ時計であり、時計用のクオーツの価格は量産効果によってわずかの価格で取引されている。
 金属式の音叉が過重に対応して振動数が変化するのを利用するハカリが、ある企業の大きな思い入れとビジネスへの執念によって製品化され、価格は安いけれども高精密、かつ経年変化もなく小型で省電力という内容で市場での成功を勝ち得ている。
 金属音叉式のハカリ方式は、ハカリとしては分析天びんと呼ばれる特別に精密な分野の質量測定用にまで発展し、価格が安いことからこの領域の質量測定のためのコストを変革した。
 また、金属音叉式は力計としての働きをもっており、日本がハワイのマウナケアに設置した地上望遠鏡としては最大級の性能をもつ反射式(鏡式)の天体望遠鏡の鏡機能を実現するための腕木と連携する構造の基礎をなす装置として用いられている。渦巻きバネの力を用いた時計が水晶振動子(クオーツ)時計に代わったのと同じように、音叉の振動を利用したハカリが市場で成功していることが重なったので言及した。
 バネの力と質量の関係を利用したバネ式のハカリは軽便かつ低価格で必要を満たすことから、様々な電子式のハカリが市場に現れているなか、今なお一番の生産量を保っている。ハカリに使われるバネはコイル式で、温度の変化によってバネの伸び縮みの変化を調整する機能が付いたハカリが多く、バネ自体に温度制御機能が備わっているものもある。
 バネを用いたハカリには、身近なものでヘルスメーターと呼ばれる平形の体重計がある。筒状の手持ちハカリはバネ式のハカリの原理がそのまま見えるうえ、軽便で安くもあるのでよく使われている。
 首が長く伸び、目の前に丸いアナログ式の表示板のあるハカリは、体重計としても使われているが、最近ではデジタル式のものへの代替えが進行している。
 丸い大きなアナログ式の表示板の上に載せ皿がある上皿自動ハカリ(略書は上自・うわじ)と呼ばれるハカリの需要は根強い。通常の商取引や生活場面での使用に対する精密さ(精度)としては用が足りており、アナログ表示は量を把握するのに都合がよく、また万が一の故障も感覚的に把握できる。
 このハカリは何十年という製造の歴史を経る過程で構造の改善が極限にまで進み、製造方法も含めて安定感と信頼性の高い製品として仕上がっている。衛生面への要求、品質感への要求に対応してステンレス製のものも作られるなど、古いなかにも新しさを取り入れている。
 デジタル表示の時計がそののちダイヤル式のアナログ表示に置き換わったことは、人が量を把握するには単純なデジタル表示であるよりもアナログ表示である方がよいことを意味している。
 計るということは計測数値だけを求めるのではなく、その計測数値と量の関係を求めたいということでもある。自動車の速度計、エンジン回転計、燃料計などもみなダイヤル表示などのアナログである。
 モノの量を計るハカリについてはダイヤル式のアナログ表示を使用者に押しつけているということも考えられるから、値段が高くてもアナログ表示を主にしてデジタルと同時表示する方式があると便利だ。
 もっとも体重計はそれを使う側が自分の体重に対する量的把握がある程度できているから、200グラム、500グラム、1キログラム、2キログラム、5キログラムの範囲で増減を確かめれば用が足りるので、アナログ表示への要求はさほど強くはない。
 アナログ表示で用が足り、またアナログ表示の要求が強い分野で、バネ式をはじめとする機械式のハカリや計量器に今なお根強い需要がある。


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