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日本計量新報 2009年2月1日 (2759号)

日本計量新報の『私の履歴書』は計量の歴史の物語である

歴史上の人物ではなく普通の生活をしてきた人が、半生を在りのままに気負わず飾らず綴(つづ)ったものが日本計量新報の『私の履歴書』である。これまでにこの欄を執筆した人は事業経営者、国家公務員、地方公務員、計量器企業従業員などであり、それぞれの立場から思いのままに綴った文章は、計量の世界の70年の歴史の一断面を鮮やかに切り取るものであった。

 戦前・戦後の国の計量行政にかかわる事柄は国家公務員の半世記につぶさに述べられているし、温度計産業、圧力計、ガス・水道メーターの戦後復興期の活動やハカリ産業などの発展のようすは計量器事業者の半生記に記されている。戦後に新制中学校を終えた東北地方の若者が農業から離れ東京に職場を求めて上京し、就労の一方で高等学校と大学を卒業し、計量器メーカーの従業員になってさらに国が運営する計量教習を修了して計量士となって製造部門で活動、企業を定年退職後は適正計量管理事業所の計量士として元気に働いているという半生記も、また計量の世界の一断面を物語る素晴らしい内容であった。

 計量の歴史を綴(つづ)る作業は歴史に関係する部門の人々が行うだけではない。自らの歩んできた道のりを在りのまま・思うままに綴れば、それもまた重要な歴史の物語となる。新聞やテレビ、ラジオなどは目先の事件や事実を扇情的に報道するために、人が生きていくべき道筋を見失わせることになりがちである。
 日本計量新報の報道にしても同様の傾向はいなめない。計量行政の差し迫った問題、たとえばハカリの定期検査にかかわる指定定期検査機関の窮状などに触れたりはするけれども、計量法と計量行政の歴史を総合的に語ることは少ない。計量制度の歴史をよく知らない人は枡(升・マス・ます)やモノサシがすべて検定を受けていたと聞くと驚く。計量器が少なかった時代にはほとんどの計量器が検定など何らかの形で役所による検査を受けていた。そして戦前は計量行政に従事する公務員が都道府県を異動していたということもあった。

 日本計量新報の『私の履歴書』は計量の世界で普通に生きてきた普通の人が綴る文章でありながら、計量の歴史の物語にもなっている。肩肘張らずに構えずに読むことのできる歴史書である。事実を在りのままに綴る文章はそれが幾つも集合したときに歴史を語る文章となる。日本計量新報の『私の履歴書』も、回を重ねていくことでそのような内容を持つようになったのである。


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