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日本計量新報 2009年2月9日 (2760号)

計量計測の世界が望ましい未来に進むためになすべきこと

報道とは、ある日ある場所で起こった出来事を知らせることだけではなく、人が知りたいことを解説などを交えて大小さまざまな形式で知らせることである。世の中では生活、農業、漁業、工業、商業その他さまざまな活動が行われており、捉えきれないほどの事件や変わった状況が起きる。
 アメリカ経済は不動産担保ローンのモーゲージなど「金融工学」と銘打ったネズミ講的金融を大展開したが、当然のようにこれが破綻して世界経済を混乱に陥れた。生産をあまりしなくなって中国、日本など世界の資金を集めてその資金を動かし、低所得者はその資金を借りて消費生活をするという仕組みが、ネズミ講が破綻するのと同じ理屈によって壊れた。工業に使われる銅やその他の金属、そして石油などの資源も投機資金の洪水に飲み込まれて異常な高値をつけていたが、金融パニック以後は安値に転じた。鉄の値上がりも異常であった。一気に2倍以上に値上がりしたその鉄が、自動車用鋼板の需要が自動車産業の減産に連動して減ってしまったから、鉄価格は以前の値段以下に転じている。鉄は大量生産により、畑で採れるニンジンやゴボウなどの野菜より価格が安いといわれるほどになった。このように工業が発達すると、従来の産業である農業や漁業とのバランスが大きく変化する。
 世の中のことを報じる新聞、テレビ、ラジオの報道はごく一部のことしか伝えない傾向が強まっている。とくにテレビは時事に関係する放送時間は15分ほどに限定されていてNHKなどはその報道内容が一日単位でしか更新されないから、ニュースのたびごとに同じことを伝える。経済は金融恐慌のことだけ、国会は衆参のねじれ現象にまつわるゴタゴタのみ、野球シーズンになるとイチローがヒットを打ったということだけを判で押したように報じる。それを聞いて世の中のことを知った気分になる報道の仕組みは、国民を感情の赴くままに走らせることになる。
 計量計測の世界という視点で捉えておかなくてはならないことは沢山ある。生活、農業、漁業、工業、商業その他さまざまな形式の活動を予断なく捉えることがまず第一である。それと関連して専門の領域の計量計測機器産業の様態を知るために生産統計、輸出入統計などを捉える。検定や検査に関する統計を政府機関がとっているが、これは普通の人が知り得る知識対象から消えている。計量器の生産状況や産業活動を捉えるためには製造事業者、卸事業者、小売り事業者などの状況を知らなくてはならない。一般計量士、環境計量士、適正計量管理事業所、環境計量証明事業者、計量証明事業者、一般の計量器使用事業所などの状況を知る手だてを講じてこれを報道することは、関係する報道機関の任務であり、責任であるから、依頼調査やアンケート調査などでこれを補足することになる。
 役所の計量法令に関係する政策は余すことなく国民と事業者に示されなくてはならないが、この方面の動きに不透明さがあるように思われるので、国と地方公共団体は意識して説明をしなくてはならない。
 適正計量管理事業所制度は質量計の精度管理を柱として事業者自らが適正計量管理に積極的に取り組むための計量法の根幹的制度であり、ここで計量管理に従事する計量士の業務は社会の計量の信頼を確保するためにも重要である。政府や地方公共団体が適正計量管理事業所制度の普及拡大に後ろ向きとしか思えない施策で対応しているのでは計量法を制定したときの精神が泣く。


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