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日本計量新報 2011年2月6日 (2856号)

構想力をもって苦難に向き合えば、未来が開ける

総務省の統計によると、日本の総人口は2008(平成20)年以降、出生児数を死亡者数が上回り減少に転じている。 将来的にも、国立社会保障・人口問題研究所が、今後40年にわたり減少していくことを「日本の将来推計人口」として予想している。
 日本の経済は、バブル崩壊以降「失われた20年」と評されるように、規模をまともに回復するような動きがない。この先も、人口の減少を考慮すると、拡大は期待できない。日本は、経済と産業の重要要素である労働と資本の面で、望ましい状態をつくれそうにないからだ。海外資本が日本に集まらないだけでなく、日本の資金や資本が海外市場に流出していることも理由である。

 拡大が期待できない日本の経済のもと、企業と個人はどのように行動していくのか。
 多くの企業は、大量につくって大量に消費を促すという方向に、力点を置きがちがちである。大量につくれば効率が増大するようにみえる。消費者も、規格品が大量に安く出回れば、規格に満足しなくても購入しがちである。しかし、安く購入した製品の使い勝手が悪かったり、すぐに壊れたりしたという経験を持つ人は多い。
 困難な状況にある時こそ、人は真摯に先々を考えて行動すべきである。企業は、安直に数値に直結する生産量だけに目を向けるのではなく、品質の向上や商品開発など、さまざまな方向を検討して力を注ぐべきである。
 国内総生産(GDP)で計られる経済とは別に、実質的な人の満足を計るモノサシを持ち込むのも、価値観を変える手段のひとつである。日本の経済の規模が小さくなっても、製品の品質など、暮らしやすさが向上すれば、人々の満足度といった実質上の豊かさは向上する。

◇ 
 鴨長明は『方丈記』(1212〔建暦2〕年)に天変地異の続いていた時代にあって、乱世をいかに生きるかという人生論として記している。「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし」(底本=「國文大觀 日記草子部」明文社)とは、現在の日本と世界の経済状況のみならず、企業活動や人の生活をも表しているようだ。それから100年ほど後の鎌倉時代末期には、吉田兼好が『徒然草』に「つれづれなるままに、日ぐらし硯に向ひて、心に移り行くよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、怪しうこそ物狂ほしけれ。」(「徒然草」尾上八郎解題、山崎麓校訂)と記している。ともに乱世から身を引いて、世の中と自己とを調和しようとする心境とも受けとめられる。

 現代の日本では、国も企業も人の生活も苦難を強いられている、勝つことだけが求められる企業ではススメススメ、兵隊ススメとはかり、勝つための精神の発露が期待されている。
 そのような状況下で大事なのは、未来が見えるまでよく考えることである。目的をもってモノを見て、考えて調べていくうちに、できることの姿や形が浮かび上がってくる。また、苦しさの中にあって未来を見る発想方法を持つことも大切である。よく使われる言葉で言い換えると「構想力」、つまり自分で考えて、成功の道筋を描きだして人に説明し、理解させて共に実行していく力があれば、多くの場合、成功の糸口が見つかるはずである。

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