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日本計量新報 2011年2月20日 (2858号)

職務に打ち込めば、学歴に関係なく素晴らしい業績に結びつく

地方公共団体では、計量行政担当職員の定年退職が続く一方で、この人々に続くいわゆる専門職の人材が育っていない。専門職を育成する計量行政の仕組みが崩れている結果である。
 現在退職が続いている計量専門職員は、高等学校や工業高校を卒業・就職してからずっと同じ職に携わり、そのまま定年を迎えている人が多い。現在では人事制度が変わり、就職試験に合格した高校や大学などの高等教育既卒の職員を一定期間で配置転換して、専門職に固定しない方法になっている。携わる期間が短いため、計量事務を実施するための専門知識と技術を習得するのが難しく、退職するベテラン職員が獲得していた知識技術と計量事務実施の心構えを備える職員が減っているのが現状である。


 日本の大学で学生数が一番多いのは日本大学で6万9千人、2位以下は早稲田大学4万5千人、立命館大学3万3千人と続く。国立大学に限定すると、大阪大学1万6千人、東京大学1万4千人、京都大学1万3千人と続く(「大学研究所学生数ランキング」2008年時点)。
 技術者、学者、経営者、行政職員、政治家などの分野では、東京大学の卒業者が占める割合が圧倒的に多い。しかし、その東京大学卒業者が、職場では並以下の能力のためにお荷物になる例もある。
 入学試験や学部教育の成績は、仕事に就いてからの能力にそのまま比例しない。自分では嫌と思いながら就いた仕事であっても、懸命に取り組むことによって業績をあげることがある。
 計量行政分野でも、学歴と職務実施の力量に比例関係はあまり見ることができない。あるハカリ企業の責任者に、技術職に関して「学歴と仕事ができる度合いは比例するか」と問うと、即座に「ほとんど比例しない」と答えていた。

 学ぶ場は、人によってさまざまだが、職場が主な場であることは当然である。
 昼は職場で学び、夜は大学二部(夜学)や定時制高校で学んで、自身の知識技術を高めた計量行政職員は多い。
 かつて、物理学校は夜学として運営され、教育課程に計量行政の幹部職員を養成する仕組みを織り込んでいた。この課程を修了して計量行政の重要人物として執務にあたった者は多く、関菊治はその筆頭である。東京や大阪など都市部には夜間の大学が多くあるため、東京都計量検定所や大阪府計量検定所は大学で学ぶことを推奨していた。中堅幹部職員は、昼は検定所、夜は大学という教育の仕組みによって育った。
 ある人は、中学を卒業してハカリの会社に「職工」として勤め、定時制高校を経て夜間大学の工学部機械工学科を卒業した。ハカリのナイフエッジ(支え刃:ハカリの目盛りざおなどの支点となる楔くさび)の性能や機能を突き詰めるためである。彼の学問への姿勢はやがて大学が認めるところとなり、大学教授となり、前後して博士号を取得した。
 ナイフエッジの研究は弾性支点への研究に進展し、現在の電子天びんの理論的基礎となった。明石海峡大橋に風への耐久性をもたせるための風洞実験では、ハカリの理論の応用である弾性支点が装置に組み込まれた。彼はこの実験を支援し、見事な明石海峡大橋ができあがった。この人は大橋を通るたびにそうした経緯を思い起こし、その業績をかみしめている。
 ハカリ企業の職工としてナイフエッジを極めようとする一途な思い、その情熱は、ついには大学経営者としての素晴らしい業績に結び付いた。彼は自ら技術を習得する研鑽を続ける一方で、所属するハカリ企業の経営者である近江商人の魂が込められた訓話を、全て自分の教養として消化した。まさに、称賛すべき業績である。

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