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日本計量新報 2011年2月13日 (2857号)

計量士の資格に仕事がついてくる仕組みを構築するとよい

誰もが夢や希望と、それを実現する計画をもって、元気に前に進んでいる。
 計量士の資格を保有し、現役で仕事をしている人の多くは、適正計量管理事業所における質量計などの自主管理や、指定を受けていない事業所における計量管理の実施などの業務によって、職場への貢献をしている。また計量法の目的たる適正な計量の実施の確保を通じて、経済と社会の発展、ひいては文化の向上に大きく寄与している。計測技術者、計測管理者といった役職に就いており、業務内容が計量法上で定められた内容のみになっている人の場合でも、さらに計測工学や品質工学などの諸工学と技術を学び、仕事に生かすことを心がけている。

 一方で、計量士の資格は活かすのが難しいという不満の声も多い。
 電気主任技術者の資格を持ち、幾つもの事業所と契約して年間に800万円ほどの収入を得ている人がいる。この人は計量士の資格も保有しているが、計量士の業務は割が合わないとして、行っていない。経済産業省所管の資格制度である電気主任技術者と計量士の資格を比べると、計量士の国家資格試験に合格する方がずっと難しいと、その人は述べている。難関である計量士の資格を保有しても、その資格に見合う仕事が少なすぎるのが実情なのである。
 計量法に定められる計量器の検定とハカリの定期検査の実施などのうち、計量士の国家資格はハカリの定期検査の実施権限に限定されている。定期検査に代わる計量士による検査(代検査)は、商店などのハカリの定期検査に際して役所の代行で広く実施されている。役所が直接検査する割合を超えている地域もある。役所からの指定定期検査機関指定に基づき、計量協会などが実施しているハカリの定期検査は、行政による検査の全部または一部が計量協会などにそっくり移行されることになる。
 行政の指定を受けて、デパートや大規模事業所などでのハカリの定期検査が「免除」される適正計量管理事業所制度は、計量士による代検査と指定定期検査機関による検査を折衷したような仕組みになっている。

 計量士の業務が少ない原因の一つに、計量行政の貧弱化がある。
 現在、地方公共団体の最大の課題は、税を含めた収入が不足していることである。首長も議員も、選挙に都合が良いから行政が行う仕事の範囲を拡大する傾向にある。税収入が増えている間は問題がなくても、収入が不足してくるに従い拡大した行政サービスが真っ当に遂行できなくなる。結果として、黙ってごまかして行政サービスを実質上止める分野と、理屈を付けて諸法を強化して行政需要を増やす分野などが出てくる。その結果、極寒の中、住居を持たず危機迫った人たちに、厚生労働省が十分な公的援助をしない一方で、環境省の所轄業務では、動物愛護行政が手厚くなっているなど、偏った予算配分がまかり通ることになる。
 現在、計量行政は予算が付いたところ、人員がいるところ、時間が確保できた範囲だけを実施するばかりである。このままでは、さらなる弱体化は避けられない。
 計量行政は、計量士の資格に知識や技術を伴っていることを前提に、資格に見合った仕事がついてくる仕組みを再構築すべきである。実現すれば、計量法の目的たる「適正な計量の実施」の確保につながり、計量計測が経済と社会の発展に寄与する道が大きく拓ける。

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