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日本計量新報 2011年8月7日 (2881号)

米国経済とドルの動きは、対応する金の目方で予測できる

アメリカ合衆国のFOMC(米連邦公開市場委員会)は2011年8月9日、実質的なゼロ金利政策を2013年なかばまで続けるという声明を出した。アメリカ合衆国の繁栄は、経済の持続的規模拡大が前提になっている。今回の金利0〜0・25%の2年間継続宣言は、米国経済を維持することが目的であることと照らすと、米国経済に踏ん張る力が大きく減じていることを明らかにするものである。

 米国ドルは、米国の圧倒的な経済力と軍事力を背景に、1944年の「ブレトンウッズ協定」で、英ポンドに代わって基軸通貨になった。当初はドルの価値を裏づけるため、ドルは金と交換できた。その上で各国通貨はドルとの交換比率が固定された。円は49年に1ドル=360円と決められた。しかし、米国の経常収支(外国との輸出入や投資などを差し引きした額)が赤字になってドルとともに金が海外に大量に流出したため、米国は1971年に金交換を停止した(ニクソン・ショック)。73年には、市場の取引で相場が決まる「変動相場制」として、ドルを金から切り離した。このように、事実上、基軸通貨の発行権は米国政府が実質上保有して、米国の都合を盛り込んで我がままに運用してきた。

 ドル発行権の乱用は、金とのバランスを変化させる。通貨制度としては、ドルと金の兌換(交換)は廃止されたが、基軸通貨としてのドルの地位は、最終的には実体的な価値が失われない金によって補償されざるを得ないからである。対応する金の量が減少すれば、ドルは基軸通貨としての独裁的地位から滑り落ちることになる。
 実際には、米国は価値が下がれば量で補うがごとくドル紙幣を増刷して世界に流す。無理して発行したドル紙幣に対するもう一方の権利者は、米国国債の保有者である。ドルと円の関係は、米国ドルの恣意的な発行状況で左右される。日本政府は自国の金融機関に米国国債を無理に買わせた。強制的に購入させられた日本の金融機関は、ドルの価値が円に対して半分になったため、とんでもない目にあった。日本の金融機関は買った米国国債に対応する金融商品を国民に販売しているので、米国の乱暴の後始末を日本の金融機関と国民が負わされている。
 ドル安・円高の動きが続く状況の中、「米ドルの価値は50円である」とテレビ放送などで臆することなく発言するエコノミストで大学教授もいる。日本の輸出企業は、50円の為替相場ではどのようなことをしても採算をあわせることができないから、何とか輸出が成立する円・ドル相場となるように願う。

 アダム・スミスの国富論には、金は貨幣であり貨幣の値打ちは質量(目方など)によって計られることが書かれている。金こそ真の基軸通貨であるから、米ドルを金貨幣と厳密に対応させれば、ドルの真の価値(基軸通貨としての実力)を計ることができる。したがって、ドルの価値は質量計で計ることができると言える。自国の都合で傍若無人にドルの発行権を行使する世界の「盟主」米国の動きと、ドルの価値を理解するコツはそこにある。ドルを金貨幣(金)に対応させて、金の目方を計ればよいのである。

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