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日本計量新報 2011年11月20日 (2894号)

放射線測定器の使用実態と計量法の規定の矛盾

世の事象を知るためには、物事の状態や変化を客観的に注意深く見ること、観察が必要である。観察者は、自分の目で捉えたことを元に考察・分析することで知りたい物事を明らかにする。

 チャールズ・ダーウィンは、1831年から1836年にかけてビーグル号で地球を一周する航海を行った。彼は自伝の中で、航海中に各地の動物相や植物相の違いを観察するうちに種の不変性に疑問を感じ、様々な文献と考察により自然選択説を思いついたと書いている。ダーウィンが1859年11月24日に出版した 『種の起源』で説いたのは、自然淘汰(自然選択)説である。厳しい自然環境が、生物に無目的に起きる変異(突然変異)を選別し、進化に方向性を与えるという説で、現在も進化を説明するうえでの根幹をなす理論とされている。

 観察の目的は知ることである。そして、正確に知るために計測がなされる。はかるための知恵として、高田誠二氏は講談社ブルーバックス『計る・測る・量る』で、比べる、並べる、釣り合わせる、うつす、数える、見る・見せる、揃える、の7つを挙げている。これら7つの方法を用いると物事がよく見えてきて、物事を知ることができる。

 いま日本の人々が一番知りたいこととして、放射線量がある。感度の低い放射線計測器で、能力に見合わない微量の放射線の測定が疑いもなく広く行われているのが現状である。適正な機器・方法で測られた正確な値と、そうでない値とが入り交じった状態といえる。

 計量法では、病院や学校での特定計量器による体重の測定は「証明」であるとされている。放射線量の測定は、現状では誰がどの機械を使ってどのような方法で測定しても計量法が規定する「証明」にはならない。病院や学校での体重測定に特定計量器としてのハカリの使用の義務を課しているのに対し、放射線量の測定が「証明」にならないのはどういうことであるか。

 この秋に開催された、計量関係者による会議の場では、放射線測定器を特定計量器に組み込むなど計量法上での措置を求める声が相次いで挙がっている。国民生活を守るために、これは当然のことである。放射線の測定の確かさ、言い換えれば放射線量の信頼性確保は、日本全体にとっての必要事項であり、早急な対応が求められる。

 

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