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日本計量新報 2012年4月15日 (2913号)

質量という概念は人類がつくった偉大な知恵

 普通の辞書(大辞泉)に質量関連の用語の説明を求めよう。「目方」(めかた)とは、物の重さ、はかりで量った重さ、重量。とある。「重さ」(おもさ)とは、 重いこと、その度合い、とあり、加えて、地球上の物体に作用する重力の大きさで、その物体の質量と重力加速度との積に等しいとし、また地球上の場所により重力加速度の値が異なるので、同一物体の重さも異なる、とされ、また重量ともある。「重量」とは、物の重さ、目方とあり、また目方が重いこと、ともある。目方についてはその語源の探求に興味がもたれ、計量の世界の物知りが何かを語りそうである。「質量」とは、物体の慣性の大きさを示す量、または重力を生じさせる原因となる量とし、もう一つとして相対性理論によれば、質量はエネルギーの一形態であるとされるとし、もう一つの意味として物の重さ、重量をあげている。

「重量」と「質量」を同一の意味として表示するこの辞書は、世間がこの二つの用語を同一にとらえていることに由来して、この理解をあてはめているのであろう。言葉、用語とは一般にはそのようなものであり、日本語の同じ言葉を使っていても、その言葉を言う側と聞く側の間にはズレがいつでも生じている。言葉の意味がそのまま通じているとは思わないで、それを補う何かを付け加えて交流することが大事になる。
 質量の説明をすることは難しい。重量との違いを理解していれば大体の用は済む。国際単位系(SI)の7つの基本単位の一つであるキログラム(kg)は質量の単位である。一般に使われる重さや目方や重量は質量の意味である場合が多い。質量の測定において重力値の影響を除外するしくみが計量法の質量計ほかの分野で規定されており、質量が1kgの肉は、きちんと1kgと表示されるようになっている。重力加速度の補正をしないで同じハカリを使うと、場所によって1kg(つまり1千分の1)ほどの差が生じさせるほどにその影響が大きい。そこで、使用地に対応してハカリを補正しているのである。こうした違いを生じさせるハカリの典型はバネ式のハカリであり、両皿天びん方式のハカリなどは、測定したいモノと分銅の両方に同じ重力加速度がかかるので、この影響を受けない。

 ハカリが重力値の影響を受けるのは1千分の1以上の精密さをもつときであるので、800分の1より目が粗いハカリの場合には重力値の補正をしないでも実質上の影響がない。質量と重量との違いを物語る例として、同じモノを月にもっていくと質量は変わらないが、重量(重さ)は変化することがあげられる。質量という概念をもうけることによって同じモノがどこに行っても同じ質量を示すことになる。

 質量の発生要因はこれまで分からなかったが、2011年にそれと思わせる立ち入った理論が登場している。人類が質量という概念をつくったとは偉大な知恵であり、この知恵を元にしなくては宇宙のことも素粒子のことも分からない。質量という概念はすべての科学の基礎になっている。

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