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日本計量新報 2012年7月1日 (2923号)

地球環境の分析はさまざまな視点での総合的計測が必要

 ランドサットが撮影した日本列島は海岸線を光で縁取りしたようになっている。現代の街の夜は光っておりそれは電気がつくった光である。現代の文明は電気によって形成されているようにみえる。日本の江戸期では、馬や牛は人の何倍もの力をだす動力として使われた。この時代に馬は人よりも良い場所に厩を与えられていた。
 英国ではジェームス・ワットが低圧式で大型の蒸気機関をつくりだしこの機械は鉱山の廃水や飲料水のくみ出しなどに使われていたが、高圧に耐え小型の蒸気機関が生み出されることによって、動力としての応用性に富む機械になり、蒸気機関の自走もできるようになった。英国でおきた産業革命は動力の革命でもあり、動力の革命は社会の生産力を飛躍的に高めた。
 
 マイケル・ファラデーは、コイルの中で磁石を動かすと、コイルの中の磁気が変化することによって電流が流れるという電磁誘導の法則をみつけた。
 電気を起こす方法の現代の主力がファラデーの電磁誘導の原理に基づいており、コイルが巻かれた誘電体と磁石を回すことによることになり、水力発電は水で直接水車を回し、火力発電は水を沸騰させて蒸気の力によってタービンを回す。核分裂の熱によって蒸気をつくる方式が原子力発電である。地熱によってつくられる水蒸気を利用するのが地熱発電である。風力発電は風の力によってプロペラを回転させる。燃料電池は水素を用意しておいて酸素と混ぜたときに発生する熱を力に変える。宇宙での電力の必要からつくりだされたのが太陽電池であり、太陽電池は光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接電力に変換する。水力発電による夜間電力の補充ということでの揚水式発電は、夜間の余剰電力によって発電機に電気を流してモーターとして作動させ、小さなダムやタンクに水を貯めて、日中の電飾需要ピーク時にこれを発電用に利用する方式である。
 現在の日本における発電の状態を概観すると必要される総発電量の基礎を原子力に依存するようにできていて、火力と水力がそれを補うようにしてつくられている。1980年代以降につくられた貯水用のダムには発電のための仕組みが体裁程度にしか付けられていないのが不思議であるのは、水力は後に引っ込んでいろ、という政府の電力計画の結果である。水力発電はこれを利用しようとすれば2倍3倍どころか5倍も10倍も発電量を増加することができる。
 エネルギーコストが安いということなどで推進された原子力発電方式は2011年3月11日に発生した大津波によって完全に打ち砕かれる結果になった。熱を得るための原子炉から飛び散る放射性物質と、それによる人と自然への放射線汚染、放射性物質によって引き起こされる健康被害と経済的社会的被害への補償と対策は電力会社のみでは補いうる状態ではない。
 
 このほど見つかった富士山直下をはしる活断層が動けば山体崩壊をおこす、ということであり、同じように原子力発電所の所在場所は活断層と無縁ではなく、ほとんどが海のそばにあるから、これが二つ重なった危険区域にあることになる。実際に発生した東京電力福島第一発電所の事故は、起こるべくして起きたということを意味する。原子力の技術者は原子力の技術の極小部分しか担当分野を与えられず、実質上設置場所の安全、総合的な安全、ほかのことを考えてはならないことにされていた。単純な原理としては原子力は小さな物質によって巨大なエネルギーを生み出し得るとはいえ、その総合安全や核廃棄物の処理を除けばという前提がつく。その前提抜きでいくら部分を改良し革新しても原子力の利用はありえない。
 
 地球の平均気温が高くなっていくのか低くなっていくのか今のところ衆議一決で判断できる状態にはない。女性科学者に贈られる「猿橋賞」の2012年の受賞者である、東大准教授の阿部彩子(あべあやこ)氏は、2万年前は地球軌道の影響と二酸化炭素濃度減少によって寒冷化が引きおこされ、この氷期は地球の平均気温がいまより5℃低く、海面が130m低かったことを明らかにしている。太陽の活動は黒点にあらわれこの黒点の変動期に英国テムズ川が氷結したことを示す記録がある。気象観測者のなかには今のようすは寒冷期のとば口にあるとデータを示す人々もいる。
 甲論乙駁(こうろんおつばく)ということで、素人の私たちにこれらのことを判断する力はないとはいえ、世の中を覆い尽くす二酸化炭素悪者説を単純に支持することはできない。諸要素を含めると、地球環境はスーパーコンピューターでもシミュレートしきれないほど複雑である。
 計測は物事を知るためになされるのであって、一部の計測データだけをもって物事の全体を推し量ることはできない。
 気候をわかろうとするときにも、安全をはかろうとするときにも、それを数値とかほかのデータとしてとりだすのは計測器であり、計測の内容をさまざまな視点から総合して分析することが大事である。

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