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日本計量新報 2012年7月15日 (2925号)

校正されない計測器は信頼することはできない

 自動車を運転しているときにはとりとめなくさまざまなことを考える。首都高速道路4号線を皇居方面に向かって走ると、赤坂見附付近に温度計がついたカード会社の看板がある。この温度計が表示する温度はいつでも自動車に据え付けられた温度計の指示値より5度ほど低く表示される。自動車が表示する温度と広告看板に取り付けられた温度計の表示のどちらが正しいかはこの2つの温度計を比べただけでは定かにはならない。しかし自動車の温度計はさまざまな場所に設置された温度計と指示値を比較しているのでこちらの方が正しいと考えてよい。
 街路の温度を摂氏1度の刻みで表示する温度計などは目の粗い温度計といって良い部類に属し、この程度の温度であれば国家標準とのつながりが公式に確認された温度計を横に置いて温度比較をすればよい。実際の温度よりも5℃も低く表示される温度計の誤表示を公に証明するとなると手間のかかることである。またこれを正しい表示にさせることをだれがするのであろうか。
 
 計測器や計測のそれなりの正確さを確保する社会的な仕組みの方法として計量のトレーサビリティがあり。目の粗い測定器や粗くてよい測定はもとより、より精密なそれを求める測定などの結果が、求めを満足するためにはある度合いで国の標準と関連づけられていなければならない。国の標準が確保されこれとの精密さの連鎖関係を確保するための技術要素を満足している機関を「計量法校正事業者」として認定登録する制度があり、この機関によって計測器などの評価付けとしての校正が行われている。校正などして正しさが確認されない計測器はあてにならない。百貨店やスーパーマーケットの冷蔵庫の温度表示と温度管理ははたして企画したとおりなのか。あるいはまた工場・事業所などの温度管理はどうなのか。ここに校正という管理業務が組み込まれない計測器はみな誤っているとみなしてよい。
 
 温度のことを、三省堂の大辞林は「暖かさ冷たさの度合を示す数値。物理的には熱平衡を特徴づけ、熱の移動する傾向を表す量。微視的には、系を構成する粒子のもつエネルギーの分布を決め、その平均値の目安となる量」と述べる。国際単位系(SI)は、温度の単位を7つ設けた基本単位のうちの一つとしている。7つの基本単位は、長さ(メートル、m )、質量(キログラム、kg)、時間(秒、s )、電流(アンペア、A)、温度(ケルビン、K)、物質量(モル、mol )、光度(カンデラ、cd)である。表記は順に量、単位の名称、単位記号。国際単位系においては温度には熱力学温度を使用し、単位としてケルビンを使用する。
 熱力学温度は理想化された系の性質から定義される温度であるために実際に計測することは容易ではないので、熱力学温度と実用上一致し、測定しやすい温度として国際温度目盛が定められており、現在使用されている温度目盛は国際温度目盛はある領域の温度を測定する計測方法とそれを校正するための定義定点からなり、計測方法としては次の各種がある。1、0.65 K−5.0 K:ヘリウムの蒸気圧と温度の関係式によって定義される。2、3.0 K−24.5561 K:ヘリウム3またはヘリウム4の定積気体温度計によって計測される。3、13.8033 K−1234.93 K:白金抵抗体の273.16 Kでの抵抗値との抵抗比によって計測される。4、1234.93 K:放射温度計のある波長での放射密度によって計測される。

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