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日本計量新報 2012年7月8日 (2924号)

経済理論よりも企業が身につけた行動原理に価値がある

日本の社会は経済統計だのその統計を演算するとこうなるだのという経済理論がまことしやかにまかり通る社会になっており、大学の教員も役所の人間もエコノミストと称する人々と一体になって、こうした理屈の上に行動を組み立てている。その背景にあるのはアメリカでつくられた経済理論である。その内容を解釈できることが望ましいと思うならば、よく学んでその本質を理解し、その行動様式を把握しておいたほうがよい。しかし、一知半解でそのようなものに身も心も振り回されないことが重要である。

 日本には100年、200年、300年とつづいている企業があり、こうした企業にはその企業独自の経済学があって、それは家訓というような形で表現されていることもあるし、親から子に伝えられる精神というようなこともある。現代においては意欲と能力があれば誰でも上級学校で学べるし、そうした学校では計量経済学などを教えている。そこではデータを集計して演算し、ああすればこうなるというような形で図を描いて行動を決めていく。すこし勉強すればだれでもそのようなことを修得することができるので、そのような人々が同じ場面で同じ考え方と方法で競うことになる。するとどんなことが起きるか。運良く成功する企業がある一方で死屍累々の状態になること必定であり、米国のサブプライムローンに関係するリーマンショックや米国の自動車産業の苦境はそうしたことの類縁と思われる。

 住友家の家訓は「浮利を追わず」ということであり、社員はそのことを教えられるようになっていてる。住友がはたして浮利を追ったか追わなかったかは別にして、企業行動の原則を経済原則と連動させて規定してる企業には強みがある。日本の計量計測機器企業でもオーナーなり重要な立場にある経営者がいつでも企業経営の原理原則を説いているところには安定感があり、総じて着実な歩みをしている。学校で半端な気持ちで仕込んだ理屈などは怪しいものであり、米国では高等教育でこのような理屈の比べっこをして、企業をこの理屈でひっぱっていき、短期的な成果を挙げて多くの報酬を得るということが、ゲームのように行われている。これは企業の発展につながるのであろうか。歩みはのろくても企業が培ってきた経営哲学や顧客からの信頼あるいは社会からの信用、そして従業員と企業との融和性などを土台にして、企業内の縦のつながり、精神と技術などの伝承を確実に行うことは不透明性が大きい今の状況ではとくに大事であると思われる。

 日本の人々は有名な学校をでた人もそうでない学校をでた人もさまざまな形で学び知識と教養を身につけているから、そうした人のなかからその職場その企業にとって有為な人材を抜擢して事業を牽引して、会社の経営に携わる人を育成することができる。松下幸之助氏は才能には恵まれていても学校での学習の機会を得ることができなかった。しかし、学ぶことは人一倍し、創意と工夫にも日本一励み、使い手のためということで渾身の努力をするうちに日本一の企業をつくった人である。人は素直な気持ちをもって働き、経営者も素直な気持ちでお客に接し、素直な気持ちで従業員の能力を見ていくことが大事であるといえそうだ。

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