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日本計量新報 2012年9月30日 (2935号)

仕事が好きで楽しい普通の大人になることが人生の幸せ

好きになる、それが楽しいということであれば仕事はうまくいくといわれる。好きでもなければ楽しくもないような状態で仕事をすると、うまくいかないということでもあろう。仕事を好きになることはなかなか難しい。ましてや仕事が楽しいということなどはなおさらである。それでも仕事をする以上は仕事が好きになり、仕事が楽しいという状況をつくりだしたい。仕事の全部が好きになることの前に、分割した部分部分の仕事を好きになることは大いに可能であろうから、そうした部分部分をやり遂げるようにすることに精進することである。何事においてもそれを成し遂げたときには嬉しいものだ。その嬉しさは楽しさに通じていく。
 人がする仕事は沢山あり、その仕事の内容はさまざまだ。学校で勉強をしていると勉強ができること、成績がよいことが褒められることなので、勉強ができることの結果として教育の競争を駆けあがると大学の教員が憧れの職業に見えてしまう。教育の競争の結果のような弁護士など法曹関係の仕事も多くの場合には憧れの職業になる。結果としてなれればよいが宇宙飛行士も憧れの職業の一つになっている。その昔、飛行機の操縦士は憧れの職業であったために、飛行機乗りの要請をうたい文句にする予科練に多くの旧制中学校生徒が応募した。外国旅行の添乗員なども無銭で外国に行くとができるために、憧れの職業でもあった。
 人の世は子供の頭に憧れの職業をうえつける。それはそのような職業に就けばよい収入を得て社会からも認められるために安定した平和な生活ができると世の中が教え込むからである。開発途上国の収入の少ない家族で育つなかで、高等教育を受けて弁護士、医者などの職業に就きたいと思う人が多い。そのような職業に就かないまでも高等教育を受けたいと思う。そうすれば高収入にして安定した職業に就き、平和な生活が送れると思うからである。幸福度指数世界一のブータンにおいても多くの子供の願いは高等教育を受けることであり、その結果として良いとされる職業に就き高い収入を得て暮らすことである。
 人の望み、個々人の望みと、その望みを叶えるにたる能力と職業の数との相対関係を考えると、人は無理して高望みしないことが良いとも思える。この場合でも人は目の前の目標に向かって一つ一つ階段や坂道を登って行くような考えを持つことがよいかも知れない。工学の優れた専門家になり、発明や改良や改善の仕事に従事したいと思っても、その前提になる基礎知識を修得できないのでは、思いは勝手な妄想になってしまうからである。日ごろの仕事でも業務でも大きな目標だけをみるととても実現困難に思えることであろうが、それを12分割し、さらに30分割すると、その数量は実現可能なものにみえてくることが多い。大きくなったら何になるかと問われれば、人に迷惑をかけない、人に信頼される大人になる、ということでよいのではないか。

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