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日本計量新報 2013年1月1日 (2947号)

事務作業の生産性向上への作業者の意識改革の必要

開発部門の大きな事務棟で100人も200人もの技術者が列をなしてパソコンに向かって機器の設計をし、関連するソフトウエアをつくっている状態をみるときに感ずることがある。凄いなとその規模に圧倒されるのと、果たしてその目的が何であり、目的に向かって上手く作業を進行させているのだろうか、ということである。
 工場などの生産部門では同じ時間に生産を二倍にすることができたとか、不良率を半分に減らすことができた、ということであればその状態を明瞭に確かめることができる。しかし、事務的な作業の様相をとるパソコンを使っての開発行為などにおいては、その作業の効率性や合目的性を確認しにくい。優秀な管理者がいて作業の段取りや進行を把握し、指導できていることが望ましい。作業している人々がその進行状況を正直に報告しないことがあるし、間違った方法をとって迷路にはまっていることも少なくないことであろう。自分がしていることの是非を判別できない状態はこのような作業においては多分に存在しているように思われる。
 改良、改善、改革の意識の薄い人は、十年一日のごとくにこれまでやってきた作業の方法を変えないことが多い。教わったことは覚えるが、自分で物事を考えて対応するという訓練ができていないのが現代の日本の人々にありがちな心もようであり、思考の状態でもある。ある程度その仕事を覚えるとこれは自分が一番知っていると自惚れて、その作業形式を固定してしまう。するといつの間にかおくれをとって化石人間になる。人はいまやっていることに間違いはないか、こうすればいい、ああすればいい、と考えて、時には人に聞いて見ることが必要である。
 新しい開発ツールなどによって設計・開発部門の生産性が一気に十倍も向上することは希なことではない。たとえば、レンズの設計は膨大な計算によって支えられている。光学機器メーカーでは算数の得意な女子従業員を大量に配置して延々と計算作業をしていた時代があった。大型コンピュータを使うと一瞬にして百人分の計算処理をしてしまったという報告があり、その後は優秀な設計と計算ソフトを用いて、高性能なズームレンズの設計が容易にできるようになった。その生産性の向上は百倍を超えていることであろう。
 パソコンを使っての諸業務についても、会計や営業やその他の支援ソフトを上手に用いることと、改良、改善の意識を明瞭にもつならば、作業効率を2倍にも10倍にも高めことができるであろう。

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