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日本計量新報 2013年1月27日 (2950号)

水、食糧、石油、エネルギーと国民生活

日本では耕地面積の増加が人口の増加につながった。奈良時代から江戸末期においてこの関係は明瞭である。江戸末期の人口は3千万人であった。戦中に一億総玉砕といっていたその1億のなかには台湾や朝鮮など当時は日本であった国の人々が含まれており、昭和のある時期の日本の人口は7千万人ほどであったので、日本における適正人口はこのくらいでろうと考えられなくもない。減り始めている日本国の人口は、明治の始まりの3千万人台に戻ることはないにしても7千万人の水準に向かって動いているようだ。団塊の世代が生産年齢人口から外れるようになり、その団塊の世代の子どもたちが子供を産み育てている。4人ほど、少なくとも3人はあった団塊の世代の兄弟姉妹が、団塊ジュニア世代ではそれが2人に達しない。団塊ジュニアは団塊の世代より少なく、その世代の後になるとそれがもっと減る。出生率を上げるのには限界があり母集団が小さければ、絶対数は大きくはならない。率を示す数字に惑わされて絶対数をみないのは誤りである。
 老齢年金は次世代によって支えているしくみであることが今になって白日の下に晒され、その次世代の人口が減りつづけると支える力が弱くなるので、年金制度の維持のためには別の方式に切り換えなければならない。衣食住などのモノをつくって、関連するサービスを提供して、それを受け取ることの対価が、巡って人々の収入になって家計が形成される。内外価格差と海外生産などによって、日本の家計収入は貧富の格差が増大するなか、総合すると減りつづけている。米国の消費割合はGDPの6割であり、日本は5割ほどである。国内消費が増えるためには家計収入の増加がなければならないのにこれが実現しない。
 飛ぶ鳥を落とす勢いで中国は経済発展をつづけている。中国の人口の推移をみると、日本の団塊世代とそのジュニア世代におきたことが中国にそのまま当てはまりそうだ。インドもそのようになる予測がある。食糧の生産の増大は人口の増加を補うに足りないからだ。その中国とインドでは農業生産をするための水が不足している。黄河も揚子江もガンジス川もメコンのデルタ地帯もその水源がヒマラヤ山脈であり、氷河が溶けて減っていることはともかくとして、水が足りない状態になっている。水資源の限度は中国経済の規模の限度になる。米国でも同じであり、大規模機械農業は大量の水を必要とするが川の水では足りなくて、氷河時代の水が地下に貯まって化石水となったのをくみ出して使っている。化石水は補充がきかないからそれがなくなれば米国の農業はやがて行き詰まる。
 石油は世界経済の基礎であった。第2次世界大戦直後の世界の富の5〜6割は米国が保有していた。そのときの米国の石油の産出量および埋蔵量は世界の石油の半分ほどであった。大日本帝国は米国に石油の供給を絶たれたために狂乱して真珠湾を襲ったのだと主張する人がいるが正解だろう。石油を求めて南方に進出しても石油は足りない。飛行機をつくる金属材料もない。中等教育年齢の人々を勤労動員しても米国がつくりだす兵器の総量の足下にも及ばない。飛行機はあっても飛ぶための石油がない。軍艦は航行するための石油がない。
 化石燃料の石炭はむこう200年の需要をまかなえるようであるし、石油もサンドオイルの利用の道が考えられ、地下に眠っている液化石油の利用に道が開かれつつある。現在の電力のかなりの部分が化石燃料の変形であり、これに水力と原子力が加わる。さらに、風力、太陽光発電、水素を用いた燃料電池などが追加される。自動車は石油で走る。最近は電気で走る自動車も開発されているが、その源が石油であっては元も子もない。石油を使わない方式の発電で得られるエネルギーによって走る自動車が求められている。しかし中国、インドなど途上国の自動車は石油を使い、せいぜい低燃費を実現することでむこう20年ほどは推移するだろう。
 水と食糧、エネルギーとして化石燃料の事情と人口の推移を探ってみた。夏と冬の平均気温差が30℃ほどもあり、冬には雪が山に積もって水源を形成する山々があり、畑の草をむしっていると後からあとからそれが生えてくる日本の気候条件は農業に恰好である。日本政府は1961(昭和36)年に農業基本法をつくって、大規模農業を推進したがその結果はどうであったろう。統計では農業人口は30万人を下回り、農業しかできないように見える土地柄でも従事者が減っているのが日本農業の状態を物語る。山の木によって煉瓦を焼いて、燃料にして栄えた古代文明は燃料が尽きるとともに消えた。今は回復したが、木を切り尽くした百年前の六甲山は禿げ山であった。大津市の奥の田上山も長野県の笠間ヶ岳もそうであった。日本の気候は植樹とその後の管理によって樹木は復元するが、いくつも古代文明の跡地は砂漠と化している。エネルギーが経済を支え文明をつくるのであるから、化石燃料と原子力エネルギーに代わる新しい発電方式の普及は国をつくることと同じと考えてよい。

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