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日本計量新報 2013年1月13日 (2948号)

企業の付加価値と人件費そして国内総生産

付加価値とは企業が新たに生み出した価値、付け加えた価値をあらわす。人、物、金を使って新たに生み出した価値のこと。付加価値は売上高からその売上を上げるために必要となった外部から調達した商品やサービスの金額を差し引いて求め、メーカーなら売上高から原材料費を引いた金額で、商社なら売上高から仕入高を引いた金額となる。付加価値からは人件費、支払利息、賃借料、租税公課、減価償却費がひかれ、最終的には税引前利益が残る。諸費用と税引前利益すべてを含んだものが付加価値である。付加価値がなければこれら費用をまかなえず利益もでない。企業はこの付加価値のために活動する。付加価値の計算方法には、「付加価値=売上高−外部購入価値」という中小企業庁方式と、「付加価値=経常利益+人件費+貸借料+減価償却費+金融費用+租税公課」経常利益+人件費+貸借料+減価償却費+金融費用+租税公課」という日銀方式の2種類がある。
 日銀方式の内容は付加価値は製造課程で積み上げられるという考え方であり、売上高に占める付加価値の割合が付加価値率で、高い付加価値率は企業が商品に付け加えた付加価値が大きいことを示し、粗利益率など収益率が高いことになる。日銀方式では人件費が付加価値のうちの重要な項目にあげられていて、企業活動に占める人件費割合は高い。非製造業のサービス業においては人件費割合は半分ほどになる。
 労働生産性とは、付加価値額を労働者数で割ったもの。労働生産性の高い製造業などはそれをさらに高める努力をして、2割高まった労働生産性の見返りとして1割5分ほどの昇給をする。人を2割減らして、一人あたりの賃金を1割ほど上げる。付加価値を上げるために人件費の安いアジアに人を求めることが多い。中小企業庁方式による付加価値計算の外部購入価値とは、材料費、購入部品費、運送費、外注加工費などである。ここに人件費が含まれていない。日銀方式では材料費、購入部品費、運送費、外注加工費などが含まれない。ともに変だがともあれ企業は付加価値を上げるために、海外製造ラインによって人件費削減をはかり、海外から部品や材料の調達をしている。
日本国内で1年間に生み出された付加価値の総額がGDP(国内総生産)であり、日本国内の経済規模の大きさをはかるモノサシになっている。GDPはストックに対するフローをあらわす指標であり、GDPの伸び率を経済成長率として取り扱っている。GDPには市場で取引された財やサービスの生産のみが計上される。このGDPは1995年に天井を打って以降下がったままでジグザグの動きをしている。この期間は物価と賃金が下がり、通貨供給量も低迷し、人の心も総じて暗い状態にあり、これをデフレと言い、この状態がいまなおつづいている。日銀の付加価値計算方式では人件費は付加価値とされる。GDPは財やサービスの生産の総合計であるから、人件費は個人所得となってGDPに計算される。自動車、電機などの産業は人件費割合を減らしているので、企業が稼ぐ利益の大きさ(ときにはマイナスの利益)と引き替えに人件費を減らすことによってGDPの縮小につながる動きをする。個人消費が国内総生産の5割ほどもあり、サービス産業の人件費割合は5割ほどであることなどであってみれば、国内の経済活動の維持と安定的な発展に果たす、この2つの要素を重要視することが大事だ。事実として大きな製造事業者がないか少ない地域における経済に占めるサービス産業の比率は大きくなっている。
人が働き、人がお金を使うことで経済が成立する。日本では働く人が減り、お金を使う人が減る。団塊世代が労働現場から去って、それより数の少ない団塊ジュニアの出生率が低いので日本の人口は減る。労働生産性の向上とその産業への従事労働者の減少、海外生産、部品と材料の海外からの調達といったGDPマイナス要素をくわえて計算すると日本の経済成長と経済発展見通しには難しさがある。世代間の賃金分配率を若い人の方に移動させること、女性の就労を促進することなどは、有効な施策となる。航空運賃は安くなるのは当たり前で安くしなければならない事業であり、この安い航空運賃を利用してアジアほかから日本観光の客を呼ぶことができる。京都ほか日本人が訪れていた観光地には中国、台湾、韓国からの人々で賑わっていたが、この波が少し引いたのは残念である。

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