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日本計量新報 2013年3月31日 (2958号)

賢者は身を慎んで危険はおかさない

人の話をよく聞き、相手が考えていること、話していることを、そのまま理解できる人はあまり多くない。人が「あっ」と言えば、その「あっ」に連動する言葉が頭の中でぐるぐる回って、「あっ」としか声が発せられていないのに、理解の弁を述べる利口者がいるのには驚く。その理解が「あっ」に続くまともな回答ではなく、身勝手な「あっ」の次の解釈であるからである。話しの聞き手の「あっ」と連動する勝手な脳の回転がそこにあり、これは得てして良い学校をに入ったり、利口そうな素振りを見せる人にありがちなことである。
 自分を利口者と思っている人の多くは、自分は物事を良く知っていて、何でも解っており、知らないことはないと思っている。知らない分野のことにも身勝手な論理と回答をもって人に向かう人は実際にはバカだ。そうしたバカであることをその人は知らないからほんとうにバカだ。人の話を聞くことは自分にとって時間の無駄のようにも思えるのだろう。人との付き合いとは自分にとって無駄な時間を設定することであると考えたらよい。
 人は世の中をその人なりに理解する。理解の仕方は人それぞれであるから、さまざまであっていい。白いモノを白いと理解するのが普通の人である。ピカソもはじめのうちは白いモノを白として表現した。青の時代である。その後ピカソは、対象を複数の角度から幾何学的面に分解し、再構成する技法を創出した。鼻がこっちにあり、眼はあっちを向いていて、口は変なところにある。キュビスムを理解でいる人には、ピカソの絵はとても素晴らしく見えるようである。人の様子や社会をそのように分析的に解釈し、理解するのは一つの方法であろう。しかしその分析と解釈と理解が世の常識から乖離してしまうと社会で通用せず、人との会話もコミュニケーションも成り立たない。
 ものを見る眼がいつも歪んでいて、言葉を発すると相手を中傷し、組織をなぎ倒そうとする人がいる。1人でそのように思い込んでいるぶんには問題は小さいが、自分の歪んだ考えで、事実と離れたことを人に伝えて、仲間をつくって人を陥れたり、組織を壊そうと画策する人がいるから世の中は恐い。そうした者の悪だくみにかかる人は不幸である。根も葉もないことにコロリと騙される人がいるからでもある。
 嘘をつくと嘘をついたという意識が身体の変調となって現れるので、その変調を捉えて表示するのが嘘発見器という計測器である。しかし常人とかけ離れた意識構造をしている者は嘘を言ってもそれを嘘だと思わないから、身体の変調をきたさない。だから嘘発見器が作動しないことになる。そのような事例に遭遇し、被害を受けることは誰しもあることである。このことに学ぶ教訓は人に騙されない用心をすることであり、怪しき者は遠ざけて近寄らないことでもある。賢者はいつも身を慎んで、危険はおかさないようにすべきである。だれの言葉か不明ではあるがこれをもって「君子は危うきに近寄らず」という。

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