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日本計量新報 2013年6月2日 (2966号)

素直さと勇気ある言葉は未来を切り開く

話をする。言葉を用いて人に意思を伝える。その言葉を聞いてものを考える。これは会話であろうか。人と人とが打ち合わせをするときに多くの場合は言葉を使う。絵や図を使うこともある。体で表現をすることもある。ここには顔の表現も含まれる。よく聞いて、よく話す。必要な事柄を伝えあう。報告、連絡、相談とはこれらのことを指す。人は報告し、連絡し、相談する場合に、必要な事項を隠してしまうことがある。心の底の意識のあり方の問題であり、その本質は勇気と素直さであると思える。
 物事の本質と目的に即した考え方と関連する報告などの文書の大切さを連合艦隊司令部第一艦隊参謀秋山真之の言葉が象徴している。
 「天気晴朗なれども波高し」とは日本海海戦のおりに海上気象を示す電文であり、連合艦隊司令部の第一艦隊参謀秋山真之が各艦隊と大本営に向けて発信している。波が高ければ風も強く、艦船が揺れれば砲弾は命中しない。その場合は第1番目の計画である決戦前夜に駆逐艦・水雷艇隊によって敵主力部隊を奇襲雷撃する作戦は実施しない。次の計画である主力艦隊が全力で敵主力艦隊と闘う作戦を実行する。この際に練ってきた丁字戦法を用いるという作戦計画を実行して大勝利し、続いて駆逐隊・水雷艇隊が夜間に敵艦隊を奇襲雷撃して、海戦に勝利した。
 嘘ではないけれども本当のことがそっくり抜けている、ということが多い。新聞、テレビ、ラジオなどのマスコミ報道は事象を取り扱うので本当らしいけれどもどこまで本当なのかという疑問を残してしまう。役所などの報告文書や役所の人々が話す言葉には嘘はないけれども本当のことは少ない、ということが多い。会社や工場などで嘘ではないけれども本当のことや大事なことが報告されていない事象が頻繁に発生すると、経営や生産がうまくいかなくなる。仕事をするには正直さ、素直さ、勇気が大事であり、そうした人間性は評価される。
 いつ聞いても、どのような場所で聞いても、聞いていることが苦痛になる話をする人がいる。真実を隠すために多くの不要な言葉をたくさん並べ、人を食って生きている人だからだ。夏目漱石の小説『坊っちゃん』では主人公が赴任した松山の中学校の生徒の減らず口に純粋無垢な江戸っ子は悩まされる。松山の小悪魔など可愛いものであるが、こうしたことを大がかりでやる軍部がいたし、いまでもどこかの国の独裁者たちがそのようにしている。山のようにため込んだ知識を悪知恵に使う人間がいるから要注意だ。素直さと正直さと勇気に裏打ちされた言葉によって報告がなされ、状態がよくわかるようになっている組織は、未来への確かな道を歩むことができる。

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