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日本計量新報 2013年6月30日 (2970号)

成功した計量企業にみる「夢を持つこと、困難に挑むこと、人を得ること」の3要素

「まず思うこと」と松下幸之助氏が講演で話したことに聴衆が失笑するなか稲盛和夫氏は、ハッとすると同時に感銘に打たれたと述べている。その稲盛氏は、「2012年の最優秀経営者」に選ばれている。産業能率大学が従業員数が10人以上の企業経営者に問うたところ25.4%の投票があって1位になった。2010年に会社更生法の適用を申請し、上場廃止した日本航空を、わずか2年で業績を回復させ再上場させた手腕が評価された。2年連続で1位であった孫正義氏をわずかに上回った。
 経営の神様であった松下幸之助氏の後にその地位にあると思われるのが稲盛和夫氏である。稲盛氏の心は研ぎ澄まされており、発する言葉は名言集として収録される。曰く、「若いころは、人生で偉大なことを成し遂げたい、という夢を持つものです。すべての若者がそのような夢を持つように、大いに奨励すべきでしょう。ただ偉大なことを成し遂げるには、日々身を粉にして働かなければならない、ということも若い人たちは理解すべきです」「どこにでもいるような普通の人間でも、真面目に情熱を持って努力すれば、天才と呼ばれる人たちよりも、素晴らしい結果を生み出すことができるのです」「現時点ではとうてい実現不可能だと思えるようなことを、何とか成し遂げようとする努力からのみ、驚くような成果が生み出されるのです」。
 松下幸之助氏は「事業は人なり」という言葉について「これは全くその通りである。どんな経営でも適切な人を得てはじめて発展していくものである。いかに立派な歴史、伝統を持つ企業でも、その伝統を正しく受けついでいく人を得なければ、だんだんに衰微していってしまう。経営の組織とか手法とかももちろん大切であるが、それを生かすのはやはり人である。どんなに完備した組織をつくり、新しい手法を導入してみても、それを生かす人を得なければ、成果も上がらず、したがって企業の使命も果たしていくことができない」と述べる。
 日本を代表する計量機器工業の団体の日本計量機器工業連合会の基礎を築いた村田瑛一郎氏(元専務、故人)は、南部鎮雄氏など歴代会長の厚い信任を得て会員増強、事業強化、組織改革などに思い切った行動にでてこれに成功した。村田氏は内外の人望を得た人であるが、当時の通産省計量課長と喧嘩して嫌われたために事務局員はハラハラしていたという。この村田瑛一郎氏がよく語ったのが「事務局は人なり」という言葉であり、職員に温かい目を向けて親切に接し励ましもした。同氏の薫陶を得た人々がその後事務局幹部としてよく働き日本を代表する計量器工業の団体である日本計量機器工業連合会を築いてきた。
 企業経営の要諦の一つは「企業は人なり」であり、また「まず思うこと」(松下幸之助氏)だ。それは「夢を持つ」(稲盛和夫氏)ことという言い方もできる。そして「現時点ではとうてい実現不可能だと思えるようなことを、何とか成し遂げようとする努力」することが大事である。計量計測機器企業の成功事例には必ずといってよいほどに「夢を持つこと、困難に挑むこと、人を得ること」の3要素が含まれている。

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