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日本計量新報 2014年3月16日 (3003号)

計量士による計量管理の実務のようすを垣間みる

ある計量士が心得事項としてSIと計量管理を心がけて仕事をしていくと述べた。SIと言った意味は、SIこと国際単位系の計量単位のことをよく知っていたいということであり、これはメートル法運動の一つの集約点であると考えてのことであろう。計量管理と述べたのは、計量士の仕事が計量管理であるということからくる。計量管理の意味を広くとらえるか、狭くとらえるかは別にして、計量士の仕事は計量管理である。計量法という法律とその規定によって計量士に委ねられてる権限は、ハカリ(質量計)の法的な意味での定期検査の代行業務である。ここから論理をおすとハカリの定期検査は計量管理であるということになり、狭い範囲に限定されている。もっとも計量法が計量器の検査ということで、使用中の計量器を検査するしくみはハカリに限られており、このハカリの定期検査を役所に代わって実施することができるのが計量士である。
 計量器には検定制度があって、計量法は検定をメーカーが自己検定するしくみをつくっている。ガスメーター、水道メーター、電力量計などは、役所などが検定を実施していたものであり、これが一定の要件を満たすと「メーカー自己検定」ができるように変更した。ハカリ、血圧計、体温計など、多くの特定計量器として指定されている計量器が「メーカー自己検定」方式になっている。
 使用中のハカリに2年に1度の検査受検を義務づけているのが計量法が定めたハカリの定期検査である。このハカリの定期検査の実施の実情は、計量協会などが指定(ハカリの定期検査を実施する指定定期検査機関)を受けて役所に代わってこれをしている。その実務は計量士の資格をもつ者であり、計量士制度はハカリの定期検査の場面で重要な機能を担うようになっている。指定定期検査機関によるハカリの定期検査とは別に、計量士が検査受検義務のある肉屋、八百屋などの商店主と契約などによって、個別に検査しており、これを計量士によるハカリの代検査と呼んでいる。この方式の実施割合は地域によって大きかったり小さかったりする。また地方公共団体が計量協会や計量士会に委託してハカリの定期検査を実施している形体もある。指定定期検査機関制度ができてからはこの組織が役所に代わって定期検査を実施するようになり、ハカリの定期検査の多くはこの組織によっておこなわれている。
 ハカリの定期検査は広い意味では計量管理である。それが計量管理のすべてであると思っている計量士もいる。計量管理とは、図りごとが上手くいくように計測の設計をして計量器を用意して、それを機能させることであるのだから、計量の対象と使用する計量器はあらゆる分野におよぶ。意欲があり広い知識と能力を備えた技術者としての計量士はこうした仕事をしている。それは計量管理であり、この計量管理は品質管理にそのままつながっている。
 品質管理ということになると「徹底した品質管理」をしているから商品がよいのだ、ということがテレビやラジオや新聞などのマスメディアで述べられるのには苦笑させられる。カメラをつくっていたころのコニカの技術者がファインダーの精密さが足りないというカメラ雑誌のテストの結果としての指摘に対して、設定されている価格とそのカメラの機能ということから、その状態で十分であり、それをもっと良くするということになると、価格が高くなり、使用の実態を超えた精密さを盛り込むことになり、それは意味のないことだ、と述べた。物事には「ほどほど」ということで適正な状態があるのだろう。

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