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日本計量新報 2014年7月6日 (3016号)

地方公共団体の計量行政への熱意に期待する

ハカリと検定制度の関わりは少しの遠回りをして理解することになる。日本でつくられるハカリの9割ほどは、取引または証明に関わらない分野で使用される。計量法の検定制度は取引または証明に関わる分野に関係して規定され、その分野で機能する。
 日本でつくられるハカリの数量の8割ほどは、台所で使われる料理用ハカリ、平型の体重測定器でヘルスメーターと一般に呼ばれているハカリが占める。病院や学校で体重測定用に使われるハカリは、証明のための計量という規定になっているので、計量法の検定を受けたものでなければならない。このような形で供給され使われる体重計は、体重計全体の数量の1割にたっしない。
 製造されるハカリの数量のうち9割ほどは検定を受けずに使ってよい分野に供給される。ハカリの1割ほど(生産数量の1割ほど)は、商店における面前計量用など取引証明用のハカリとして、供給される。ここにおいて供給という言葉は必ずしも正確ではない。ハカリが取引または証明に用いられる場合には、そのハカリの使用者あるいは所有者は、そのハカリの検定を自らの責任で受検し、これに合格しなければならないのである。
 ハカリが全品、検定に合格していなければならない時代があった。供給されるハカリは、供給時点で検定を受けこれに合格していること、というしくみの時代である。これを一般にメーカー検定と呼んでいた。その後にハカリの検定が取引と証明分野という限定がつけられたことによって、その検定受検の義務がハカリの使用者に移されたために、これをユーザー検定制度というようになった。この言葉はこれが当たり前のようになっているために今はほとんど用いられない。
 ハカリには検定制度にからんで込み入った規定があり、精密さが非常に高い分野のものは検定の対象から外されている。またはかりの最大はかれる量に比べはかりの載せ台が小さいものなども同じである。精密さがうんと高い物と、目盛りが粗い物は、計量法の検定を受けることなく、取引・証明に用いることができる、という事実がある。このことに関係しては、そのハカリを使用する分野で取引の双方について計量の整合性について合意がなされていることが求められる。
 ハカリの生産数量の8割を超える料理用ハカリ、ヘルスメーターには計量法の検定制度とは別の枠で、家庭用特定計量器という概念が設けられて、この概念のもとでハカリの丈夫さと精密さを確保する方式が運用されてきた。これらの家庭用のハカリは、検定を受けていないので、取引と証明に用いることはできない。しかしこうした知識がない使用者が、家庭用ハカリを取引と証明の分野で使用しているという計量法違反の実例は多い。
 ハカリと計量法ということでは、検定を受けて取引・証明分野で使用されているハカリは、定期検査といって2年に1度の検査を受けてこれに合格しなければならない。定期検査における器差の合格条件は検定時の精密さの2分の1(2倍の粗さ)である。
 人の暮らしのなかでは、自動車に入れるガソリンなどの燃料は、燃料油メーターということで、ここに計量法が関係して検定を実施している。またタクシーのメーターも精密さの確保のために計量法がかかわって検定を実施している。
 世の中に供給されている計量計測機器の数は生産統計で把握できないほどに多い。計量法の検定を受けた計量器は行政機関で把握するしくみになっているのでこれはわかる。計量法の検定を受検しこれに合格して世のなかに出回っている計量器は、どのように多く見積もっても、世のなかに供給される計量器の1%ほどである。
 検定対象となるハカリはその程度の数量から割引して把握できるほどであり、定期検査対象となるハカリも数も想像できる程度である。このような状態にあるハカリの定期検査の完全実施は、地方公共団体の絶対的な責務であり、この責任を全うすることが世のなかの平和に寄与する。燃料油メーターのうちガソリン計量器は、あまりにも見えすぎているから、検定漏れになる事例はないといってよい。同じようにタクシーメーターも同様である。
 社会の基礎的な部分を担うことが行政の機能であったものが、生活と福祉の具体的な分野に直接にかかわるようになるにしたがって、行政費用が大きく膨らんで、その費用の捻出ができなくなっている。
 行政のというより、選挙によって選出される自治体の長や議員の人気取りのために、膨らむ一方の福祉関連の行政のあおりを受けている基礎的な行政分野がある。地方公共団体における計量行政をどのように理解し、どのように運営するかは、自治事務になった計量行政であるからそれぞれで考えていくことだとしても、計量法に規定されたハカリの検定と定期検査、ほかの業務をあらゆる工夫と大いなる奮闘と努力によって実施することは、自治体とその職員の責務である。どのような仕事でも全力を尽くして取り組み、その仕事がうまくいくと満足し幸福感を得ることができる。
 計量行政と連動する形で、計量士によるハカリの検査が日常的に実施されており、また適正計量管理事業所制度の社会的な意義を理解して、この制度に対応している事業所の誠意を知れば、地方公共団体は計量行政に誠心誠意取り組むことだ。事実多くの地方公共団体が計量行政に熱意をもって取り組んでいる。

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