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日本計量新報 2014年7月20日 (3018号)

人への放射線影響と数値にまつわる事項

広島と長崎に原爆が投下された後に、この地の人は瓦礫と化した建物を取り除いて、復興を成し遂げた。原爆による放射線汚染のことは今の人ほどには意識されなかったために、放射能による原爆症で多くの人が苦しんだ。与えられずそして及ばなかった知識は、その後に原爆症という忌まわしい被害をもたらした。
 東京電力福島第一原発事故による放射線汚染が、広島と長崎の原爆による放射線被害、そしてチェルノブイリ原発事故によるそれと、どう対比され人への健康被害の影響はどのようなのかということが共通の理解となることが強く求められる。国連科学委員会は「福島での甲状腺被曝線量はチェルノブイリの60分の1以下」「福島はチェルノブイリではない」と報告している。日本の被爆地の病院で被曝医療に従事し、チェルノブイリの現地調査をした医学者は、福島の被曝量はチェルノブイリとは違い、非常に少ない量であるから、人への健康被害は恐れられているほどには現れない、と事故直後にNHKラジオの深夜便で語っていた。
 原発事故直後に周辺地域の人々がすばやく避難したことや、汚染された食糧を摂取しなかったことによって、被曝線量はそのままそこに留まっていた状態に対して10分の1程度に抑えられたことを国連科学委員会は報告しており、また放射性セシウムの全身被曝線量はわずかであるから「ガン患者の増加は考えられない」としている。子供の甲状腺ガンの発生率は、たまたま調査がおこなわれた青森、山梨、長崎の各県と福島県では差がなかった。医療分野の学者が福島の健康への被害はないと放射線被害について身体をはって説くことには大いに耳を傾けなけらばならない。
 放射線が環境に与える影響、環境の一つとしての農作物、人が食べる魚介類への影響、それを摂取する人の健康への影響などが、事実にそくして平静に伝えなければならない。その場合には計測値と計測器が存在する。その計測器は求めるべき精密さを実現するために、まちがいなく機能しなければならない。条件の設定によっては1と10、あるいは1と100や1000ほどに環境分野の測定では測定値に差が出る。こうした測定値の差あるいはバラツキに対する判断と評価によっては、違う結論が出される。

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